研究課題
巨大な子宮筋腫では稀に腫瘍由来のerythropoietin (EPO)分泌のため多血症を呈する事があるため,本研究はEPOが筋腫の巨大化に関与しているとの仮説により,EPOの子宮筋腫における発現とその作用を検証する事を目的とした.研究期間内に114例の子宮筋腫手術検体を収集・解析した.Real-time Rt-PCR法で,全症例の60%程度の筋腫組織が正常筋層より多くEPO mRNAを発現しており,組織から抽出した蛋白のELISA法で得られたEPO蛋白発現量と相関していた.また,EPO発現量は子宮筋腫径と正の相関関係があり,EPOは筋腫の増大に関与していることが示唆された.子宮筋腫に対するEPOの作用について,免疫組織化学法により細胞増殖,アポトーシスおよび血管新生を検討した.EPO高発現例と低発現例間で増殖・アポトーシス細胞の発現に差は見られなかった一方で、EPO高発現例では低発現例に比較して血管成熟が亢進している傾向があった.組織内血管密度には差が認められなかった事から,EPOは子宮筋腫において血管成熟を亢進する事により腫瘍の増大を促している可能性が示唆された.最終年度には子宮筋腫がEPOを発現する機序の解明を目的に,in vitro実験を行なった.具体的には,手術で摘出された筋腫・正常筋層組織のprimary culture細胞を用いて低酸素,エストロゲン,プロゲステロンおよびその組み合わせがEPO 発現におよぼす作用について検討し,エストロゲンは一部の症例で筋腫細胞のEPO発現を亢進することが示された.筋腫の発生には複数の機序が混在していると考えられており,現在報告されている遺伝子異常などとの関連を検証中である.
すべて 2015
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American Journal of Obstetrics and Gynecology
巻: 212 ページ: xx-xx
10.1016/j.ajog.2015.02.016