研究課題/領域番号 |
24592526
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
金山 清二 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10423914)
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研究分担者 |
重富 洋志 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20433336)
春田 祥治 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30448766)
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
吉澤 順子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80526723)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗癌剤耐性機序解明 / 婦人科癌 / 卵巣明細胞腺癌 |
研究概要 |
研究の目的 近年本邦において卵巣明細胞腺癌は増加傾向にあるが、癌化学療法に抵抗性を示す。明細胞腺癌の治療成績を向上させるにはその薬剤耐性機序の解明が不可欠であるがいまだ十分には解明されていない。抗癌剤耐性機構を規定する原因遺伝子を解明し候補遺伝子修飾による抗癌剤感受性亢進による新規治療法を確立することを目的とする。 研究成果 1.卵巣明細胞腺癌における抗癌剤耐性機序に関わる責任遺伝子の特定 我々の抗癌剤感受性の異なる明細胞癌培養細胞を用いた抗癌剤耐性遺伝子の網羅的解析や臨床検体を用いた免疫組織染色の結果でも、核内転写因子であるHNF1betaが明細胞腺癌に特異的に発現しており、抗癌剤耐性機序に関与する可能性が示された。2. HNF-1betaノックアウトによる抗癌剤感受性亢進機序の解明 HNF-1beta過剰発現株の培養実験では、抗癌剤ブレオマイシンを添加によりG2期で細胞周期が停止し、細胞死は抑制されていることが判明した。この現象はSiRNAによりHNF-1betaをノックダウンすることにより消失した。その機序について詳細に検討したところHNF-1betaが、DNA損傷チェックポイント機構の主要な因子であるchk1タンパクの持続的なリン酸化をもたらしていることが明らかとなった。また、HNF-1beta非発現細胞株を用いて、ウイルスベクター導入によるHNF-1beta恒常的発現株の樹立を行った結果、細胞周期調節因子のリン酸化により細胞周期停止が起こるが、チェックポイント機能不全により細胞死が起こらないことを証明した。その後にチェックポイントを外すと細胞死が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想通り、HNF-1betaの過剰発現が明細胞腺癌細胞の癌化学療法抵抗性に関与している可能性が示された。細胞周期制御、なかでもチェックポイント機構と関連していることが証明された。今までの検討によりHNF-1beta機能を抑制するためには、Chk1 inhibitorを使用することが判明し,抗がん剤の感受性亢進が確認されれば、将来的には抗癌剤耐性である明細胞腺癌に対する新規分子標的治療として臨床応用が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
抗癌剤によるDNA損傷に対してHNF-1betaを過剰発現する明細胞腺癌はDNA損傷チェックポイント機構を制御することにより細胞死を免れている可能性が明らかとなった。今後はHNF-1betaが具体的に制御する遺伝子を細胞周期関連、チェックポイント機構関連に注目し検索していく。現在、3つの異なる明細胞腺癌細胞株を用いて、HNF-1betaのノックダウンにより変動した遺伝子をマイクロアレイで網羅的に検索している。ここからHNF-1betaが関与する細胞周期制御因子やチェックポイント標的遺伝子を抽出し、抗癌剤耐性獲得機序につきさらに明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
なし
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