研究実績の概要 |
本研究では、①卵巣癌に対する化学療法について、Single nucleotide polymorphism (SNP)に基づいた卵巣癌術後化学療法(TC療法)の効果予測システムの開発、②卵巣癌に対する分子標的治療薬の開発経路の異常を探索することによる、適応決定のバイオマーカーの開発を目的とした。①については、卵巣癌および子宮体癌症例(63症例)の血中正常リンパ球から抽出したDNAを用いて網羅的SNP解析を行い、TC療法じの好中球減少の程度で分けた2群間で統計学的有意差が認められたSNPを選別した。これらのうち5つのSNPではprogression free survival (PFS)においても相関を認めた。また、好中球減少を予測するSNPの組み合わせを判別分析にて抽出した結果、20種のSNPが抽出された。予後との相関を検討したところ、 ②についてはFGF3, FGF4, FGFR1, FGFR2, PIK3CAの5種の遺伝子のコピー数増幅について、卵巣癌患者の癌組織より抽出したDNAで検討した。FGF3, FGF4についてそれぞれ7%、12%の症例でコピー数増幅が認められた。これらと臨床病理学的因子や予後との相関を検討したが、有意な相関は認められなかった。次に、卵巣癌14細胞株を用いて、上記5遺伝子のコピー数増幅を検討したところ、FGF3, FGF4遺伝子はES2細胞株で、PIK3CA遺伝子はJHOS2, JHOC8細胞株で増幅が認められた。これらの細胞株を用いてSorafenib、Everolimus, Temsirolimusの細胞傷害性試験を行ったところ、SorafenibのIC50値がES2細胞株では有意に低値であり、FGF3, FGF4コピー数増幅がSorafenibの効果予測マーカーとなりうることが示された。
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