研究課題
本研究の目的は婦人科癌のリンパ節転移に対する新たな治療薬としてのヒト抗体の開発である。癌化の過程で変化する細胞表面の糖鎖異常は治療のターゲットとなり、今までの研究では婦人科癌の転移能上昇に伴う特異的な糖鎖構造の変化を比較検討し、婦人科癌の転移に伴う糖鎖構造の特異的な発現を解明した。同定した糖鎖構造の変化は診断上も重要な役割を担い、増加する糖鎖発現は糖鎖バイオマーカーとなる。糖鎖発現の変化はレクチンマイクロアレイを用いて糖鎖バイオマーカープロファイルとして捉え、個別化診断に役立つことも将来的に期待される。臨床上はリンパ節転移を有する症例は有意に予後不良であり、治療面ではリンパ節転移は従来の抗癌剤等の治療法の効果には限界がある。そのため、本研究ではリンパ節転移に特有な糖鎖構造をターゲットした新たな治療薬の開発を行っている。現在までに婦人科癌の手術検体に対してレクチンマイクロアレイを用いて、表面糖鎖抗原の比較解析を行い、転移能と関連性が高い糖鎖抗原のプロファイルを作成した。転移能にかかわる特定の細胞表面の糖鎖構造を精製して免疫原として、これらをターゲットする治療抗体の作成が進行中である。今年度は作製された抗体の抗腫瘍効果をin vitroおよびin vivoにて検討し、治療効果が高い抗体作製を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
現在までに婦人科癌の転移能と関連性が高い細胞表面の糖鎖抗原のプロファイルにレクチンマイクロアレイを用いて作成し、それらの糖鎖抗原を治療ターゲットとした抗体作成を進めている。上記方法で作成した抗体の抗腫瘍効果および機能的なスクリーニングが進行中である。
新規ヒトモノクローナル抗体の作製:精製した腫瘍細胞を免疫原として完全ヒト型抗体を産生するKM mouseに投与し、従来の方法にてヒトモノクローナル抗体を作製し、癌細胞のみを高い確率で認識するヒト型モノクローナル抗体を作製してきた。得られたハイブリドーマ上清のスクリーニングには免疫組織化学的染色およびcell ELISAを用いて、転移巣および原発腫瘍の違いを利用して、特異的に反応するハイブリドーマを選別した。今後は作製した抗体の抗腫瘍効果およびリンパ節抑制効果を検討し、治療効果を有する抗体を確立する。モノクローナル抗体の抗腫瘍効果の検討: 作製したヒトモノクローナル抗体の機能評価にはリンパ節転移モデルを利用してin vivoで検討し、有望な転移関連糖鎖抗原をターゲットする新たなヒトモノクローナル抗体を選別する。In vivoに確認する系としてリンパ節へ特異的に転移を来す、以前樹立したリンパ節のマウス転移モデルを使用する。このモデルでは移植細胞はヒト細胞であり、リンパ節転移形成過程におけるヒトモノクローナル抗体の投与にて直接的な抗腫瘍効を確認することができる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Nature Communications
巻: 5:4478 ページ: 1-9
10.1038/ncomms5478