研究実績の概要 |
我々が作製したヒト抗体は婦人科癌、中でも子宮体癌に特異的に抗腫瘍効果を示すことを解明した。子宮体癌のリンパ節転移能で差を認める低転移能のHec 8細胞および高転移能のHec 9細胞を用いたin vitro proliferation assayではHMMC-1は両細胞に対して増殖抑制効果を示したが、高い転移能を示すHec 9細胞に対しては、より強い増殖抑制効果を示した。細胞間での細胞周期の影響を除外するため、cell cycle analysisを用いて、cell cycleのマーカーとなるp16, p21, p27の発現には差がないことが判明し、増殖抑制効果は増殖能の差に影響されないことを示した。 さらにHMMC-1抗体の認識糖鎖抗原を解明した。Hec 9細胞をSDS-gel電気泳動し、HMMC-1反応タンパクをさらにUEA-1カラムクロマトグラフィーにて精製した。トリプシン処理後にAXIMA-CFR plus MALDI-TOF質量分析し、MASCOT解析にてそのタンパク同定を行った。その結果、HMMC-1抗体の反応タンパクはCD166およびCD49であることが判明した。これらタンパク上の認識抗原構造がFucα1→2Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAc→Ser/Thrであることを解明した。この糖鎖抗原を発現する糖転移酵素のα1,2FucT1, Core1β1,3GlcNAcT, β1,3GalT5, およびβ1,4GalT1の発現解析をHec 8およびHec 9細胞で行い、より転移能が高いHec 9細胞にはextended core 1構造を決定するCore1β1,3GlcNAcT酵素の発現上昇を認めた。局所発現においてもconfocal免疫組織化学染色にてCD166およびHMMC-1抗体がHec 9細胞において同部位を認識していることを解明した。結論として、HMMC-1抗体は子宮体癌細胞の増殖抑制効果をin vitroで示し、その認識糖鎖抗原がFucα1→2Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAc→Ser/Thrであり、HMMC-1抗体の認識タンパクはCD166であることがわかり、子宮体癌の中でもCD166発現上昇を示す腫瘍にはHMMC-1抗体は分子標的治療薬としての今後の臨床的役割を検討する。
|