研究課題/領域番号 |
24592533
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
西 洋孝 東京医科大学, 医学部, 講師 (60307345)
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キーワード | microRNA / 子宮頸がん / 腫瘍マーカー |
研究概要 |
【目的】近年、ゲノム情報発現系における新たな調節・制御分子としてmicroRNA(miRNA)が注目され、がんのバイオマーカーとしても有望視されている。そこで本研究ではこのmiRNAに着目し、子宮頸がんの早期診断を可能とする血清中miRNAの探索 ・同定を試みた。【方法】患者の同意を得て採取された子宮頸がん47例、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)64例および、健常者34例の血清からtotal RNAを抽 出した。各検体におけるmiR-483-5p、miR-1246、miR-1275、miR-1290、miR-100をrealtime RT-PCR法にて定量解析し、各群間の比較や進行期との相関性を調べた。miR-100の標的遺伝子をin silico解析にて探索し、realtime RT-PCR法、western blot法、luciferase assayにて相関性を調べた。【成績】miR-483-5p、miR-1246、miR-1275、miR-1290およびmiR-100が候補マーカーとなり、それぞれの子宮頸がん患者血清中の定量値は健常者に比し有意に高値であった(miR-100のみ低値)。また、それぞれの値と進行期が相関していた。in silico解析により、パクリタキセル感受性遺伝子USP15がmiR-100の候補標的遺伝子としてあげられ、realtime RT-PCR法、western blot法、luciferase assayにより確認された。【結論】血清中miR-483-5p、miR-1246、miR-1275、miR-1290およびmiR-100がは、単独でも子宮頸がんの分子マーカーになり得ると思われた。これらのmiRNA値を組み合わせてスコア化することにより、子宮頸がんの診断や治療の効果判定の一助となると思われる。miR-100はUSP15を通じ、がんのパクリタキセル耐性メカニズムに関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検体採取に関しては、2年間でコントロール40例、子宮頸がん88例および子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)80例から検体を採取する計画を立 てたが、2年間で子宮頸がん70例およびCIN64例の検体を収集するにとどまった。また、組織検体からのmiRNAの採取は進んでいない。in silico解析による腫瘍マーカー候補miRNAの標的遺伝子の探索は、miR-100に関しての研究成果のみ得られ、他のmiRNAの標的遺伝子については現在検討中である。以上、予定よりやや遅れている部分が認められるため、上記の通り判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き検体を採取し、血清中miRNA発現量と組織検体におけるmiRNA発現量の測定を行う。また、USP15以外のmiR-100の候補標的遺伝子の探索を行う。miR-483-5p、miR-1246、miR-1275およびmiR-1290の候補標的遺伝子の探索とそれぞれの相関性を調べる。最終的な血清中miRNAの発現量と臨床情報の相関性を解析し、子宮頸がんの早期診断や治療効果判定の有用性を検証する。それぞれのmiRNAの発現量の組み合わせも統計学的に解析し、もっとも優れた組み合わせを見出す。
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次年度の研究費の使用計画 |
検体採取が予定より遅れたため、試薬等の使用量が計画より下回った。また、miR-483-5p、miR-1246、miR-1275およびmiR-1290の候補標的遺伝子の探索がin silico解析のみにとどまり、実際の実験が遅れたために試薬等の使用量が計画より下回った。以上、2点が次年度使用額が生じた理由と考える。 ①total RNAの抽出やrealtime RT-PCRを行うための各種試薬。②子宮頸がん細胞株に対する核酸の形質導入等における、遺伝子工学的手法および分子生物学的手法を用いた実験のための培養液や各種試薬。③研究成果の発表における学会参加費や旅費。④論文投稿に際しての、英文校正費や投稿費。上記①~④に研究費を使用する予定であるが、特に研究計画の遅れに関わる部分である①と②に、生じた次年度使用額を充当する。
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