血清中microRNA(miRNA)の発現が、診断・治療に関するバイオマーカーとなり得るとしてその臨床応用が有望視されている。本研究では、子宮頸癌の早期診断を可能とするような血清中miRNAの探索・同定を行うために、子宮頸癌患者における循環血液中のtotal RNAを抽出し、miRNAマイクロアレイを用いて網羅的に発現量の大きく変化しているmiRNA(miR-483-5p、miR-1246、miR-1275およびmiR-1290)を同定した。子宮頸癌47例、子宮頸部内腫瘍(CIN)64例、健常者34例から循環血液中のtotal RNAを抽出し、これらmiRNAおよび子宮頸癌組織においてその発現が低下しているmiR-100が、腫瘍マーカーとなり得るかrealtime RT-PCR法にて定量解析した。末梢循環中のmiR-1290とmiR-100については、進行期との相関性を認め腫瘍マーカーとしての臨床的意義が示唆された。 これらmiRNAの候補標的遺伝子をin silico解析により検索したが、miR-100の候補標的遺伝子にパクリタキセル感受性遺伝子ubiquitin specific peptidase (USP)15を見出した。3’-UTRを含むUSP15遺伝子配列をルシフェラーゼコンストラクトに組み込み、子宮頸癌細胞株を用いてmiR-100強制発現系でルシフェラーゼアッセイを行ったところ、ルシフェラーゼ活性が減弱した。また、子宮頸癌細胞株を通常酸素濃度と低酸素下(1%O2)に24時間培養し、miR-100とUSP15の発現をrealtime RT-PCR法やwestern blot法にて確認したところ、低酸素がmiR-100の発現を亢進しUSP15の発現を抑制することを見出した。miR-100強制発現系を用いて、子宮頸癌細胞株に対するパクリタキセルの感受性の変化を増殖能をもって検討したが、miR-100強制発現系ではパクリタキセルに耐性を示した。 低酸素により、癌の抗がん剤耐性の獲得など悪性度が増強されることが知られているが、子宮頸癌細胞では低酸素によるmiR-100の発現亢進がパクリタキセル耐性に寄与することが示された。
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