研究実績の概要 |
好酸球性中耳炎は気管支喘息などのアレルギー性疾患に合併する難治性の中耳炎であるが、疾患がコントロールできない状態では、高率に難聴などの内耳障害を来たすことが明らかになっている。研究代表者らはこれまでに臨床研究に加えて、中耳に著明な好酸球浸潤が認められるモデル動物を用いる基礎研究により、好酸球性中耳の病態解明についても取り組んできた。動物モデルの作成方法は、Hartley系モルモットを卵白アルブミン(以下OVA)の腹腔内投与により全身感作させた後、右耳に経鼓膜的にOVAを1、2、4週間に渡り経鼓膜的に中耳に連日注入するものである。その結果、中耳へのOVA刺激が長期に渡るほど、中耳粘膜に浸潤する好酸球は増加することが明らかになった(Nishizawa H, Matsubara A, et al. ACTA Otolaryngol, 2012)。また、蝸牛の骨胞もOVA注入により、骨新生による肥厚が認められ、OVA刺激が長期に渡るほど、新生骨の形成は著明となっていた。2週間投与よりも4週間投与により、有意な骨壁の肥厚が認められた(ACTA Otolaryngol投稿準備中)。さらに、中耳の好酸球性炎症が持続することにより、内耳への好酸球の浸潤も認められるようになり、OVA刺激が4週間のモデルでは高度なコルチ器の障害、すなわち高度の難聴を来たすモデルとして利用できることが示唆された(Matsubara A, et al. ACTA Otolaryngol, 2014)。一方で、好酸球性中耳炎では「めまい」を合併することも明らかとされている。めまいについては比較的軽度であるために、臨床上の観点では難聴ほどは問題視されてはいない。実際にモデル動物における末梢前庭器の障害はコルチ器に比較して軽度な印象であり、同じ内耳の感覚器であるが、コルチ器における障害と末梢前庭器では病態が異なることが示唆された(耳鼻咽喉科展望総説、投稿準備中)。
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