小児難聴の他覚的聴力検査には睡眠下の聴性定常反応AASRを利用した検査が行われるが、反応の性質、特に睡眠との関係については不明である。より正確な精密聴力検査を行うために、聴性定常反応と睡眠深度の関係について解明し、さらには聴性定常反応と眠脳波の両者を応用した新しい他覚的聴力検査システムを開発することが本研究の目的である。 平成24-25年度までは、ASSR 反応閾値と睡眠ステージの関係を解明するため、プログラム作成ソフトウェア、Lab VIEW (National Instrument)をもちいて我々が独自に開発したASSR 解析システムと市販の睡眠ポリグラフィ(ソムノトラックプロ、フクダ電子)を用いて、聴力正常成人を被験者とし睡眠脳波とASSR を同時測定し、ASSR 反応閾値に対する睡眠ステージの影響についてデータ収集を行い検討した。この結果、睡眠深度が深いほどASSRの閾値は小さくなるという現象が認められ、ASSRの結果から聴力レベルを推定する際には睡眠ステージを考慮する必要があると考えられた。 これまで用いた方法は、二つの検査機器を併用し、両者の結果を検査後にすり合わせる方法で、データの解析が煩雑であるため、オリジナルのASSR測定システムに睡眠脳波を解析するソフトを新たに組み込んで、ASSRと睡眠深度の両者の同時測定を試みた。睡眠深度の判定は、American Academy of Sleep Medicineの基準に準じ、後頭部・前頭部からの脳電位と眼球運動の筋電位を記録・解析し、覚醒、睡眠stage N1~N3、Stage Rに分類した。開発したプログラムによる睡眠深度判定の正確性を検証するため、市販のPSGで得られた睡眠時脳波の生データを解析したところ、睡眠深度判定の精度はまだ不十分であり、今後、オリジナルプログラムの改善が必要であると考えられた。
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