研究課題/領域番号 |
24592546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今井 貴夫 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80570663)
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研究分担者 |
宇野 敦彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10335341)
中前 幸治 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (40155809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 眼球運動解析 / 良性発作性頭位めまい症 / 先天性眼振 / アーノルドキアリ奇形 |
研究概要 |
当研究は異常眼球運動解析による中枢性疾患と末梢性疾患の鑑別を目的とする。良性発作性頭位めまい症(以下BPPV)は半規管内に浮遊物が存在し、頭位変換により浮遊物が動き、浮遊物の動きにより浮遊物が存在する半規管が興奮、もしくは抑制されることにより、頭位変換眼振、および頭位変換時のめまいが誘発される疾患である。浮遊物が前半規管に存在する前半規管型BPPVはDix-Hallpike法による頭位変換により、患側の前半規管が興奮し、眼球の上極が上方にある耳向きの回旋成分と下眼瞼向きの垂直成分を持つ眼振が誘発される。前半規管型BPPVは極めてまれな末梢性疾患であり、しばしば中枢性疾患と間違われ、その鑑別が重要である。後半規管型BPPVではDix-Hallpike法による頭位変換により、患側の後半規管が興奮し、眼球の上極が下方にある耳向きの回旋成分と上眼瞼向きの垂直成分を持つ眼振が誘発される。しかし、後半規管型BPPVにおいてDix-Hallpike法による頭位変換時に、浮遊物が後半規管を抑制する方向に動いた場合、前半規管型BPPVと同様の眼振が誘発される。これを我々は「偽前半規管型BPPV」と名付けた。真の前半規管型BPPVと偽前半規管型BPPVのDix-Hallpike法時の眼振は完全に同一であるため、Dix-Hallpike法時の眼振だけでは両者の鑑別は不可能である。当研究により、真の前半規管型BPPVと偽前半規管型BPPVは前半規管型BPPVの治療法である逆エプリー法中の第三頭位で誘発される眼振に違いがあることを見出し、逆エプリー法中の第三頭位の眼振を観察することにより鑑別できることを示した(Imai et al. Pseudo anterior canalolithiasis, Acta Otolaryngologica, 2013, in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半規管型BPPVは極めてまれであり、中枢性疾患との鑑別を要する疾患である。頭位変換眼振が前半規管型BPPVの眼振のように見えるが、実はBPPVに最も一般的な後半規管型BPPVである「偽前半規管型BPPV」の存在を示し、その病態を考察し、真の前半規管型良性発作性頭位めまい症と偽前半規管型良性発作性頭位めまい症との鑑別方法を確立し、論文として報告した。これにより、中枢性疾患と鑑別を要する前半規管型BPPVの眼振を示す症例の中に最も一般的な末梢性疾患である後半規管型BPPVが存在することを示した(Imai et al. Pseudo anterior canalolithiasis, Acta Otolaryngologica, 2013, in press)。 先天性眼振症例の視運動性眼球運動、滑動性眼球運動を240Hz動画で記録し、240Hzでの解析を行い、視運動性眼球運動、滑動性眼球運動における先天性眼振症例の緩徐相は指数関数的に変化していることを明らかにした。先天性眼振症例の視運動性眼球運動、滑動性眼球運動時における急速相と緩徐相の役割を明らかにし、2012年のバラニー学会にて報告した。 アーノルドキアリ奇形にて奇妙な下眼瞼向き眼振を示す症例の眼振を240Hz動画で記録し、240Hzでの解析を行い、緩徐相のみでなく、急速相をも詳細に解析し、Bow tie眼振を示していることを明らかにし、Bow tie眼振がsquare wave jerkと下眼瞼向き眼振が1:2の比率で出現している眼振であることがわかった。当症例に頭部回転を負荷し前庭動眼反射を誘発させた場合、square wave jerkだけが抑制されることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
大阪大学医学部付属病院耳鼻咽喉科めまい専門外来を受診した、異常眼球運動を示す症例の異常眼球運動の240Hz動画での記録を続ける。 先天性眼振症例の視運動性眼球運動と滑動性眼球運動における急速相と緩徐相の定性的な役割を解明したので、今後は数学モデルを用い、これらの眼球運動をシュミレートし、定量的な解析を行っていく。 アーノルドキアリ奇形にて奇妙な下眼瞼向き眼振を示す症例の眼振を240Hz動画で記録し、240Hzでの解析を行い、Bow tie眼振を示していることを明らかにし、Bow tie眼振がsquare wave jerkと下眼瞼向き眼振が1:2の比率で出現している眼振であることがわかった。当症例に頭部回転を負荷し前庭動眼反射を誘発させた場合、square wave jerkだけが抑制されることがわかった。当症例が後半規管型BPPVに罹患し、そのときの眼球運動の記録に成功した。後半規管型BPPVにて誘発される眼振は前庭性眼振で垂直成分を有する。Bow tie眼振を示す当症例に回転刺激が加わった場合、square wave jerkのみが抑制され、垂直成分は抑制されないことがわかったが、後半規管型BPPVの眼振は通常、上眼瞼向きの垂直成分を有するので当症例のBow tie眼振に後半規管型BPPVの眼振が加わった場合、Bow tie眼振の垂直成分に対する影響を検討し、Bow tie眼振の病態を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
先天性眼振症例の視運動性眼球運動、滑動性眼球運動の数学モデルの作成、シュミレート、および定量的な解析のために必要な高性能コンピューターの購入、および、数学モデル作成のために必要なソフトウエア-の購入を行う。これらの購入により、アーノルドキアリ奇形のBow tie眼振に後半規管型BPPVの眼振が加わった眼振の解析も可能となり、また、病態考察のための数学的なシュミレーションも可能となる。
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