Gas-chromatography/ mass-spectrometry(GC/MS)を用いてモルモットの内耳リンパ液のメタボローム解析を行い、血漿との比較を行った。また、強大音を負荷した直後と24時間後の内耳リンパ液における代謝産物の変化も検討した。その結果内耳リンパ液から77種類の代謝産物が同定され、うち15種類の代謝産物の量は内耳リンパ液と血漿の間に有意な差がみられた。また10種類の代謝産物は、音響負荷により内耳リンパ液内で有意に変化がみられた。 モルモット(ハートレー系、オス:250-300g)を用いた。まずモルモットを深麻酔下に断頭し、蝸牛を摘出した。その際に同時に血液も採取した。次に顕微鏡下に正円窓・卵円窓からマイクロピペットを用いて、内耳リンパ液を採取した(1匹2耳より約5-10μl)。採取した内耳リンパ液および血漿から水溶性代謝物を抽出し、フリーズドライ、誘導体化の過程を経て、最後にガスクロマトグラフィー質量分析装置(GCMS-QP2010)にて代謝物を測定した。得られたデータは主成分分析にて内耳リンパ液に特異的な代謝物を検討した。主成分の分析の結果から内耳リンパ液中に水溶性代謝物が合計77種検出された。このうち、アスコルビン酸やイノシトールなど血漿中と比較してリンパ液中に有意に多く認める代謝産物や、バリンやリン酸など血漿中よりリンパ液中に有意に少ない物質もみられた。 次にモルモットに4kHz、 126dB SPLのオクターブバンドノイズを2時間加えることにより不可逆的な難聴モデルを作成した。音響暴露直後と24時間後の各タイムポイントで内耳リンパ液を採取し、質量分析装置にて代謝物を測定した。結果グリセロールなどの合計10種の代謝産物において、血漿と比べて有意に音響負荷による変化がみられた。
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