研究課題/領域番号 |
24592548
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
谷本 均 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50362786)
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研究分担者 |
大月 直樹 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40343264)
山下 大介 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (60306785)
勝沼 紗矢香 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80457043)
藤田 岳 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90533711)
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キーワード | 内耳 / 血液-内耳関門 / RNA干渉 / クローディン / ドラッグデリバリーシステム |
研究概要 |
RNA干渉法によって血液-内耳関門の構成蛋白質の転写を抑制し、マウスの血液-内耳関門バリア機構を分子量選択的、一時的、可逆的に調整する。血液-内耳関門バリア機構を調整したマウスに対し、経静脈的に薬剤を全身投与し、内耳に薬剤が到達していることを証明する。C57BL/6マウスを使用して、巨大音響外傷を与え音響外傷モデル作成する。その後、血液-内耳関門の主要蛋白であるclaudin-5転写の抑制RNA干渉剤を経静脈的に投与する。RNA干渉法はその48時間後に内耳障害細胞再生を目的に神経保護剤として脳由来神経栄養因子Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)を経静脈的に投与する。そしてclaudin-5転写抑制する干渉RNAの代わりに生食を経静脈的投与後、BDNFを経静脈的に投与したコントロールマウスとを内耳免疫蛍光染色、聴性脳幹反応を用いて、形態学的、電気生理学的評価を行っている。 さらにclaudin-5転写の抑制RNA干渉の効果をより明確な形でとらえる目的で、音響外傷の治療効果ではなく、claudin-5転写抑制する干渉RNAとBDNFの投与を音響外傷前に行い、予防効果の検討を行っている。分子量の小さい薬剤が受動的に血液-脳関門を通過できるとされているため、分子量の違う神経保護薬剤を使用し検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストレプトゾトシン誘発I型糖尿病モデルマウスで、CD31免疫染色の用いて加齢に伴う蝸牛軸の組織学的変性を認めた。音響負荷での難聴発生後の遷延、組織学的にラセン神経節細胞死増加を確認した。レーザードプラー計を用いて蝸牛血流低下を認めた。糖尿病マウスでの内耳易障害性を明らかにした。(Increased inner ear susceptibility to noise injury in streptozotocin-induced diabetic mice. Diabetes)。 一側聴神経腫瘍で手術を行った患者で、術前の温度刺激検査で反応のある患者では術前に比べて術後1週で有意に機能低下し、3カ月で回復した。また50、60歳代では術後6、9カ月まで機能低下が続き、高齢であるほど、術後平衡機能障害が強いことを明らかにした。(第114回日本耳鼻咽喉科学会) 川崎病の治療ではアスピリンが使用されるが、日米ではアスピリン使用量が異なる。アスピリンの副作用で起こる感音難聴発生頻度がアスピリン使用量の少ない日本ではアメリカに比べて低いことを示唆した。(Sensorineural Hearing Loss Associated with Kawasaki Disease. Otolaryngology online journal. in press) RNA干渉法によって血液-内耳関門バリア機構を調整したマウスに対し、経静脈的に薬剤を全身投与し、内耳に薬剤が到達していること、薬剤が内耳で作用していることを証明する目的に研究をすすめている。巨大音響外傷を与え音響外傷モデル作成して、血液-内耳関門の主要蛋白であるclaudin-5転写の抑制RNA干渉剤を経静脈的に投与し、血液-内耳関門の薬剤通過を可能にする。RNA干渉法後内耳障害細胞再生を目的に神経保護剤として脳由来神経栄養因子BDNFを経静脈的に投与した。そして内耳免疫蛍光染色、聴性脳幹反応を用いて、形態学的、電気生理学的評価を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きRNA干渉法によって血液-内耳関門の構成蛋白質の転写を抑制し、マウスの血液-内耳関門バリア機構を分子量選択的、一時的、可逆的に調整できることを証明していく。血液-内耳関門バリア機構を調整したマウスに対し、経静脈的に薬剤を全身投与し、内耳に薬剤が到達していることを証明する。 巨大音響外傷を与え音響外傷モデル作成した後、血液-内耳関門の主要蛋白であるclaudin-5転写の抑制RNA干渉剤を経静脈的に投与し、その後に内耳障害細胞再生を目的に神経保護剤として脳由来神経栄養因子Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)を経静脈的に投与する方法を中心に行ってきたが、血液-内耳関門の主要蛋白であるclaudin-5転写の抑制RNA干渉剤を経静脈的に投与し、BDNFを投与したC57BL/6マウスに巨大音響外傷を与える方法に変更する。RNA干渉法による血液-内耳関門バリア機構を調整し、音響外傷モデルマウスの治療効果をみる研究に加えて、より効果が出やすいとされる予防効果をみる研究も行っていく。分子量の小さい薬剤が受動的に血液-脳関門を通過できるとされているため、分子量の違う神経保護薬剤を使用し検討している。 またRNA干渉法による血液-内耳関門バリア機構の調整が可能かどうかを薬剤の治療・予防効果以外に、造影剤、染色剤を経静脈的に投与し、薬剤が血液-内耳関門を通過し、内耳に到達しているかを確認する。
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