研究課題/領域番号 |
24592550
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西崎 和則 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90180603)
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研究分担者 |
吉延 潤子 岡山大学, 医学部, 技術専門職員 (80448224)
折田 頼尚 岡山大学, 大学病院, 助教 (90362970)
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キーワード | 嗅球の投射細胞 / N-methyl-D-aspartate潅流 / 化学的脱神経 / メチマゾール / アポトーシス / 嗅覚路 / 再生 |
研究概要 |
我々は、嗅上皮に選択的に障害を引き起こすメチマゾール投与し、嗅細胞の細胞死(アポトーシスによる)に引き続いて嗅細胞とシナプス形成をしている嗅球の投射細胞のごく一部が細胞死すること、この実験に骨髄細胞を加えると骨髄由来細胞が嗅球において大多数がクリア細胞にごく一部が投射細胞に分化することを報告しているが、再生神経細胞がどのように神経回路構築に関与するかは明らかでない。このため、嗅球の再生神経細胞よる神経回路構築の研究を3年間で予定しているが、最初の段階として、嗅球投射神経細胞の多数に細胞死を引き起こさせ、嗅覚路における再生細胞の取り込み率を高めるため、N-methyl-D-aspartateを局所灌流の有用性を検討した。N-methyl-D-aspartate潅流によって、嗅球の神経細胞の細胞死および組織修復が起こっている可能性が示唆されたが、実験個体を増加するにつれて嗅球の細胞死を起こした神経細胞数のばらつきが大きく、安定した結果を得られなかった。投射細胞を細胞死に至らせる実験手技を標準化するため努力を重ねたが、より安定な化学的脱神経による嗅球の神経細胞の細胞死がメチマゾールを反復投与することによって獲得されるか否かを検討した。 メチマゾールの反復投与を3回から5回まで行い、1回投与に比べて、投射細胞の細胞死が増加するか否かを投射細胞のマーカであるTBX21とアポトーシス(細胞死)を検出するためにTUNNEL法とカスペースを利用して免疫組織学的な検討を行った。いずれの投与回数においても、TBX21陽性細胞数の減少が僧帽細胞層(僧帽細胞により構成される)より、僧帽細胞と同じく投射細胞を構成する房飾細胞が存在する外網状層に観察された。この減少は、メチマゾール投与の間に急速に回復することが観察された。今後、僧帽細胞より房飾細胞に焦点を合わせ嗅球の再生神経細胞よる神経回路構築の研究を遂行していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
N-methyl-D-aspartate潅流が再現性のある神経細胞死を引き起こさなかったことにより、安定的に神経細胞死を引き起こす方法の確立に時間を要している。 また、研究棟の耐震化工事による実験室の移転準備および引っ越し並びに仮移転にともに実験室の規模の縮小のため実験計画が予定通りに進行しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
嗅球の神経細胞の障害方法をN-methyl-D-aspartateの局所灌流からメチマゾールの複数回投与に変えて、骨髄細胞移植を行い移植された骨髄由来細胞の嗅覚回路への取り込みを明らかにする。 これとは別の角度で検討するために、嗅上皮から嗅球における嗅覚神経回路の研究で世界的な業績を挙げている理化学研究所の感覚神経回路形成研究チームに大学院生を平成26年4月から派遣して、この研究所が持つ多分子励起型顕微鏡の焦点深度が深い性質を利用し、さらに理化学研究所が開発したマウス成体脳の透明化するCUBIC(キュービック)技術を利用して、GFP陽性骨髄移植後のレシピエントマウス成体脳で、嗅覚障害後に移植されたGFP陽性細胞の嗅覚路への関与の動向を経時的および立体的に解析することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究棟の耐震化工事による実験室の移転準備および引っ越し並びに仮移転にともに実験室の規模の縮小のため実験計画が予定通りに進行しなかった。 平成25年度に生じた未使用額と合せて次年度にて実験に必要なマウス、試薬を購入する予定である。
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