研究概要 |
我々は,加齢に伴って罹患率が増加する生活習慣病(メタボリック症候群)が内耳にも変化を生じ,それに伴って老人性難聴が促進される可能性について着目した。本研究の目的は,生活習慣病と老人性難聴の関連を明らかにし,抗加齢物質を用いた内耳保護療法を老人性難聴の予防に応用できる可能性を明らかにすることである。そのため我々は, まず,生活習慣病モデルマウスの内耳における 組織学的変化,分子生物学的変化を明らかにし,その変化がどのような役割を持つのかを明らかにしたい。そして,サプリメントとして広く使用されている薬剤(コエンザイムQ10,レスベラトロール等)を投与することで,老人性難聴の治療モデルを作成,解析することを目的とする。昨年度にメタボリック症候群モデルマウスTSODの加齢と聴覚機能の変化について生理学的検討を確認し,この動物が加齢とともにABR閾値の上昇を示し,対照マウスと比較して有意な聴覚障害を示すことを明らかにした。本年度は,TSODマウスと対照動物の内耳における遺伝子発現について,DNAマイクロアレイ法を用いて検討した。結果として,TSODマウスではIGF-1などの成長因子の遺伝子発現が低下していることが明らかとなった。また数種類の炎症性サイトカインの遺伝子発現が亢進していることも明らかとなった。次年度には,これらの遺伝子発現の変化が聴覚機能にどのように影響しているかを,組織学的に検討する予定である。また,TSODマウスに薬剤を投与しており,治療モデルについても明らかにできる予定である。
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