研究課題/領域番号 |
24592552
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小森 正博 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (30565742)
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研究分担者 |
小林 泰輔 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (30253313)
上原 良雄 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (60346723)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / 慢性中耳炎 / 遺伝子解析 / MLST |
研究概要 |
黄色ブドウ球菌の起原には地域特異性があり、その地域にてさまざまな変異をしてきた。そして、獲得した遺伝子から病院にて病原となった院内関連型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と一般社会に存在する市中関連型MRSAに大別される。院内関連型MRSAには多剤耐性に関与する遺伝子を持つものがある。一方で、市中関連型MRSAにも毒素遺伝子を持ち院内関連型MRSA以上に重篤な肺炎や菌血症を引き起こすものがある。近年のグローバル化の中で市中関連型MRSA肺炎が病院内で発生したり、特定の地域を越えてMRSAが広がったりする傾向がある。 慢性中耳炎の起炎菌は黄色ブドウ球菌が約半数を占め、近年増加傾向にある。その検討は抗生剤の感受性あるいは院内関連型・市中関連型からなされており、耳鼻咽喉科領域の感染性疾患において、遺伝解析を詳細に行った報告や、健常者のブドウ球菌株と疾患から分離されたブドウ球菌株をマッチングさせた報告は認められない。今回の第1の目的は、従来法ではできなかった進化的時間軸を反映した系統樹を作成できるMulti-locus sequence typing (MLST)法により耳漏中の黄色ブドウ球菌の遺伝子解析を行い、健常者の鼻腔内の黄色ブドウ球菌との違いを明らかにすることである。 慢性中耳炎のClonig Complex(CC)8とCC5の割合は健常者のものより多く、その理由としてこれらのCCにはMRSAが含まれているためと考えられた。さらに、慢性中耳炎では健常者に多いCC188、CC508が少なく、健常者に少ないCC121、CC509、CC59が多かった。 耳漏から分離された黄色ブドウ球菌は健常者鼻腔のものと比較して明らかに偏りがあり、健常者鼻腔内では稀とされる菌株が多いことを明らかにした。今後、慢性中耳炎をきたしやすい黄色ブドウ球菌の特徴について検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MLST法による遺伝子解析は順調に遂行され、健常者との差も見出しつつある。他の耐性遺伝子や毒素遺伝子について、検討数は少ないが、作製したプライマーが作用することを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在保存している菌株を用いて、耐性遺伝子や毒素遺伝子について検討するともに、薬剤感受性をデータベースに入力していく。なお、菌株が増える毎にMLST法による遺伝子解析も合わせて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
PCR試薬の追加購入やDNAシークエンサー(当大学総合研究センター実験実習機器施設に設置)にて塩基配列を同定する際の検査依頼料ならびに必要試薬の追加購入を行う。国内2学会(大分、宮崎)ならびに国際学会(カナダ、バンクーバー)における発表を予定している。また、初期データを国内学会誌へ投稿する。
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