研究課題/領域番号 |
24592552
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小森 正博 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (30565742)
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研究分担者 |
小林 泰輔 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (30253313)
上原 良雄 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤講師 (60346723)
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キーワード | メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 / 慢性中耳炎 / 遺伝子解析 / MLST / 薬剤感受性 |
研究概要 |
黄色ブドウ球菌の起原には地域特異性があり、その地域にてさまざまな変異をしてきた。そして、獲得した遺伝子から病院にて病原となった院内関連型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と一般社会に存在する市中関連型MRSAに大別される。院内関連型MRSAには多剤耐性に関与する遺伝子を持つものがある。一方で、市中関連型MRSAにも毒素遺伝子を持ち院内関連型MRSA以上に重篤な肺炎や菌血症を引き起こすものがある。慢性中耳炎の起炎菌は黄色ブドウ球菌が約半数を占め、近年増加傾向にある。その検討は抗菌薬の感受性あるいは院内関連型・市中関連型からなされており、耳鼻咽喉科領域の感染性疾患において、遺伝解析を詳細に行った報告や、健常者のぶどう球菌株と疾患から分離されたブドウ球菌株をマッチングさせた報告は認められない。 2012年度は進化的時間軸を反映した系統樹を作成できるMLST法により耳漏中の黄色ブドウ球菌の遺伝子解析を行い、耳漏から分離された黄色ブドウ球菌は健常者鼻腔のものと比較して明らかに偏りがあり、健常者鼻腔内では稀とされる菌株が多いことを明らかにした(Otol Jpn 24: 1; 10-14, 2014に掲載)。 2013年度は院内関連型と市中関連型による薬剤感受性、内毒素、術後経過を比較検討した。院内関連型において耐性化が進み、内毒素を多くもつ点は過去の報告と同様であった。一方、市中関連型にて重篤な肺炎を引き起こすとされるPVL毒素遺伝子は検出されなかった。TSS毒素遺伝子の有無、術後経過には院内関連型・市中関連型との間に差を認めなかった。よって、臨床上の差違を示す要因は同定できていない。 今後はE-testを用いて抗MRSA薬剤感受性(MIC)についてさらに詳細な検討を加えるとともに、その他の毒素遺伝子の検討を追加する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性中耳炎のClonig Complex(CC)8とCC5の割合は健常者のものより多く、その理由としてこれらのCCにはMRSAが含まれているためと考えられた。さらに、慢性中耳炎では健常者に多いCC188、CC508が少なく、健常者に少ないCC121、CC509、CC59が多かった。耳漏から分離された黄色ブドウ球菌は健常者鼻腔のものと比較して明らかに偏りがあり、健常者鼻腔内では稀とされる菌株が多いことを明らかにした(Otol Jpn 24: 1; 10-14, 2014に掲載)。院内関連型において耐性化が進み、内毒素を多くもつ点は過去の報告と同様であった。一方、市中関連型にて重篤な肺炎を引き起こすとされるPVL毒素遺伝子は検出されず、他疾患でも報告されているように本邦の院内関連型は世界のそれと異なっている印象である。TSS毒素遺伝子は院内関連型・市中関連型のいずれにも散見され、術後経過は院内関連型・市中関連型との間に差を認めなかった。実験として順調に進んでいるが、臨床経過を悪化させる要因を同定できていないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は薬剤感受性をカルテからの抜粋するだけではなく、E-testを用いてさらに詳細な検討を加えるとともに、その他の毒素遺伝子の検討を追加する予定である。 また、菌株が増える毎にMLST法による遺伝子解析、毒素遺伝子解析も合わせて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
臨床経過に反映されている因子としてカルテからの薬剤感受性、内毒素、TSS毒素、PVL毒素、MLSTを検討したが、明確な結果を示すことができていない。今後症例数を増やすとともに他の因子についても検討を加える必要がある。 PCR試薬の追加購入やDNAシークエンサー(当大学総合研究センター実験実習機器施設に設置)にて塩基配列を同定する際の検査依頼料ならびにE-test関連の消耗品など必要試薬の追加購入を行う。国内2学会(東京、新潟)における発表を予定している。
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