研究課題/領域番号 |
24592556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
戸川 彰久 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70305762)
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研究分担者 |
山中 昇 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10136963)
池田 頼彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20423949)
小上 真史 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90423946)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / フェーズ変化 / 莢膜 |
研究概要 |
1996年にWeiserは、肺炎球菌は莢膜構造の差により2つのコロニー形態を示すことを報告している。莢膜が薄く、細菌の付着因子の発現が高いとされ、肺炎球菌が上皮細胞に付着することにより有利に働くと考えられるTransparent型肺炎球菌と、厚い莢膜構造のため、補体結合性が低くオプソニン化後の貪食処理に抵抗を示し、局所組織内に長期に存在することに適するOpaque型肺炎球菌である。急性中耳炎の難治化には、、細菌自体の形態(フェーズ)も大きく関与すると考えられるが、その報告はほとんどない。今年度はフェーズ変化に関連する検討を進める上で、基本となるその評価方法を確立した。すなわち、肺炎球菌のフェーズ評価は、肺炎球菌を5000U/ml cataraseを含有したTryptic soy agar 寒天培地(TSA-C培地)にて37℃で16時間培養した後に、オリンパス株式会社製研究用実態顕微鏡システムSZX16-3151にて80倍の拡大鏡下で評価することで可能となった。さらに莢膜量に詳細な検討を加えるために肺炎球菌の莢膜量の定量化を、その主要な病原因子である莢膜多糖体(capsular polysaccharide)に注目し、その評価方法を確立した。すなわち莢膜多糖体(capsular polysaccharide)に対するモノクローナル抗体を作成し、inhibition ELISA法により莢膜多糖体量を定量化した。今回は肺炎球菌の血清型として6B型の定量化が可能となった。肺炎球菌の莢膜量の定量化が可能となったことにより、フェーズを視覚のみで顕微鏡下で判定するものを、より客観性をもたせて判定できることになったと考えられる。この手法を用いてフェーズ変化に対して影響を与える環境因子がさらに解明されれば、中耳炎の治療戦略にも影響を与えることとなり日常臨床にも大きく貢献すると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の実験を行うに当たっての基礎実験は完了したと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
抗菌薬によるフェーズ変化に及ぼす影響の検討を肺炎球菌血清型6B型 L82016株を用いて行う。研究の実際としては最小発育阻止濃度の1/32に希釈したクラリスロマイシン、アモキシシリンに反応させた肺炎球菌L82016株を600nmでの吸光度が0.3、0.5となるまで増殖させ、その時の肺炎球菌の菌数、Transparent型の比率、莢膜多糖体(capsular polysaccharide)に対するモノクローナル抗体を用いてELISA法で莢膜多糖体(capsular polysaccharide)量を測定する。これにより抗菌薬の肺炎球菌莢膜への影響を調べ、抗菌薬による肺炎球菌のフェーズ変化誘導の可能性について検討することが可能になると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺炎球菌の増殖とフェーズ変化についての抗菌薬の影響についての検討をinhibiton ELISA法で行うため、ELISA機材、ELISA試薬、肺炎球菌培養機材、抗菌薬などが必要となると思われる。また肺炎球菌標準株としてTIGR4株(血清型4型)、L82016株(血清型6B)、BG7322株(血清型6型)、EF3030株(血清型19F)を用いて肺炎球菌のコロニー形成とフェーズの検討を行う。
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