研究課題/領域番号 |
24592557
|
研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
保富 宗城 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90336892)
|
研究分担者 |
田村 真司 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10244724)
戸川 彰久 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70305762)
杉田 玄 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (20407274)
玉川 俊次 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40543781)
|
キーワード | 肺炎球菌 / 母体免疫 / PspA |
研究概要 |
1.母体経鼻免疫による仔マウスの肺炎球菌に対する特異的免疫応答の記憶の検討 肺炎球菌表面蛋白抗原PspA(10μg)をコレラトキシンBをアジュバントし雌マウス(BALB/c、4週齢)に1週間に2回、3週間、計6回の経鼻免疫を行い、雄マウスと交配した後に新生児マウスを得た。この新生児マウスにおける抗肺炎球菌PspA特異的免疫応答の検討を行った。すなわち、新生児マウスの脾臓における抗PspA特異的IgG産生細胞の検討をおこなった結果では、母体経鼻免疫母マウスより生まれた仔マウスでは、非免疫母マウス由来の仔マウス(コントロール)にくらべ有意に多い抗PspA特異的IgG産生細胞を認めた。さらに、仔マウスを6週齢まで哺乳飼育した後にPspA(5μg)単独による刺激をおこない、血清中の抗PspA特異的IgG抗体価の経時的な変化を検討した結果では、母体経鼻免疫由来の仔マウスでは、血清中抗PspA特異的IgG抗体がPspA刺激の1週後(7週齢)より上昇し、コントロール仔マウスに比較して2週(8週齢)から3週(9週齢)後まで高値であった。 2.母体経鼻免疫による子マウスの肺炎球菌感染予防効果 1と同様の免疫スケジュールで、肺炎球菌表面蛋白抗原PspA(10μg)による母体経鼻免疫を行なった後。新生児マウスを6週齢まで哺乳飼育した後にPspA(5μg)単独の刺激をおこない、さらに2週後(8週齢)に肺炎球菌TIGR4株を10000 CFU腹腔内接種し生存期間を検討した。コントロールマウスでは、48時間以内にすべて死亡した後に対して、母体経鼻免疫由来の仔マウスでは、有意な生存期間の延長が認められた。 これらのことから、PspAによる母体経鼻免疫により新生児マウスに長期に免疫学的記憶が誘導されることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母体経鼻免疫により、仔マウスの脾臓には抗PspA特異的IgG産生細胞が存在し、PspAの単独刺激により血清中の抗PspA特異的IgG抗体価の経時的な変化を検討した結果では、母体経鼻免疫由来の仔マウスでは、血清中抗PspA特異的IgG抗体が再度上昇することから、母体経鼻免疫により、新生児マウスに免疫学的記憶が誘導されていることが確認されており、今後その機序の解明に進む段階へと順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、PspAによる母体経鼻免疫による新生児マウスの特異的免疫記憶の機序の解明をおこなう。 1.グリーンマウスを用いた母体経鼻免疫による新生児マウスの特異的免疫記憶の機序解明 新生児マウス中の母体由来細胞を追跡するために、6週齢のC57BL/6-Tg(AG-EGFP)(グリーンマウス)雌マウスと、C57BL/6雌マウスを使用する。PspAにて経鼻免疫したグリーンマウス母に免疫を行っていない母マウス(C57BL/6)由来の仔マウスを哺乳させる。C57BL/6仔マウスの体内においてグリーンマウス由来の抗PspA特異的抗体産生細胞の有無を確認することで、母乳を介した新生児マウスの免疫応答の維持機構について検討する。 2.新生児マウスの免疫応答への母乳栄養の関与 PspAにて雌マウスを母体経鼻免疫をおこない、新生児マウスを得た時点で、(A群)PspA経鼻免疫母マウスが自分の出産した仔マウスを育てる群、(B群)PspA経鼻免疫母マウスが非免疫母マウスが出産した仔マウスを育てる群、(C群)非免疫母マウスがPspA経鼻免疫母マウスが出産した仔マウスを育てる群、(D群)非免疫母マウスが自分の出産した仔マウスを育てる群(コントロール)の4群に分類し、新生児マウスの血清中抗PspA特異的抗体価の変化を検討する。コントロールマウスに、NOD/ShiJic-scid Jclマウス(NOD/SCIDマウス:T・B細胞機能欠如、NK活性・補体活性・マクロファージ機能低下マウス)仔マウスを用いることで、新生児期の免疫応答の維持における母乳栄養の重要性を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究は免疫に3週間、その後のマウスの免疫学的成長8~9週間で検討するため、1つの実験に要する期間が12週(3ヶ月)と非常に長期になる。本年度では、研究計画は順調に進行しており、PspAの追加刺激により母体経鼻免疫由来の仔マウスでは、PspA特異的免疫応答の再賦活が認められ、免疫学的記憶が誘導される可能性が認められているが、本年年度で得られた結果の追試は次年度におよぶため、若干の次年度使用額が生じた。 次年度の、免疫学的機序の解明とともに、本年度の結果であるPspA特異的免疫応答の再賦活が認められ、免疫学的記憶が誘導される結果の追試験を行ない結果の再現性の確認を加えておこなう。
|