研究課題
肺炎球菌表面蛋白抗原PspAを用いた母体経鼻免疫による仔マウスへの免疫誘導のメカニズムと免疫学的記憶についての検討を行った。とりわけ、(1)母体経鼻免疫による駒薄野の肺炎球菌に対する特異的免疫応答の記憶と、(2)母乳栄養を介した新生児マウスへの肺炎球菌特異的免疫応答の変化について検討した。(1)雌マウス(BALB/c、4週齢)を1週間に2回、計6回の経鼻免疫を行った。第1~4免疫はコレラトキシンBをアジュバントとして用い、第5~6免疫はPspA単独で行った。免疫後に雄マウスと交配し約3週間後に新生児マウスを得た。新生児マウスを6週齢まで哺乳飼育した後にPspAにより再度刺激を行ない、免疫応答の変化について血清中抗PspA特異的IgG抗体価の変化を検討した。母体経鼻免疫母マウス由来の新生児マウスでは、6週齢ではすでに1週齢で認められた抗PspA特異的IgG抗体価は測定感度以下に低下していたが、PspA単独にて再刺激することで2週例より抗PspA特異的IgG抗体の上昇を認め、3週齢では有意に高い抗PspA特異的IgG抗体価をみとめた。(2)肺炎球菌表面蛋白抗原PspAにて免疫後雄マウスと交配し、約3週間後に新生児マウスを得る。同時期に出産するように非免疫雌マウスを設定し、免疫母乳栄養マウス:PspA経鼻免疫母マウスが自分の出産した仔マウスを育てる群、非免疫母乳栄養マウス:PspA経鼻免疫母マウスが非免疫母マウスが出産した仔マウスを育てる群を作成した。新生児マウスの血清中抗PspA特異的抗体価は、免疫母乳マウスでは3週齢までで有意に上昇した。これらの結果から、母体経鼻免疫では母乳を介して新生児マウスに免疫応答が移行し、仔マウスでの免疫学的な記憶が誘導されることが判明した。