研究実績の概要 |
たとえば”内耳再生医療”のような、霊長類と齧歯類で種差が想定されるような新規治療法の臨床応用に際しては、ヒトでの治験に先だって霊長類モデルによる非臨床POCが橋渡し研究において極めて重要と考えられる。そこで我々はこれまで小型霊長類コモンマーモセットによる包括的かつ横断的な霊長類難聴モデルを提唱し、その準備を進めてきた。 これまでにマーモセット研究の準備段階として、CT、MRIによる末梢聴器から聴覚中枢神経ネットワークまでの画像解析法、耳科研究用のマーモセット飼育施設、全自動耳音響反射プログラム、全身麻酔下での聴性脳幹反応測定システムを確立した。最終年度まで手術手技については再検討を重ね、経口挿管による全身麻酔下での正円窓投与、外側半規管からの内耳内直接投与、蝸牛基底回転側壁からの蝸牛内直接投与の三つの経路について手術手技を確立した。 平成26年度までの検討でマーモセットはstrainによる聴力の差があることを見出し、統計検討も含めた非臨床POCに資する研究には、準近交系のコロニーを用いた解析を要することを見出した。これらの検討結果をベースとして、平成27年度より音響外傷モデル樹立を試み、プローブによる音響提示、およびフリーフィールドでの騒音負荷の両者によるアプローチ法を確立し、一過性閾値上昇モデルを作成した。また、組織学的解析に必須な細胞種特異的マーカーのコモンマーモセット蝸牛における発現パターンを収集するために、これまでに約40の遺伝子発現を検討した。この一部には遺伝性難聴の原因遺伝子を含んでおり、学会発表および英文誌への発表を行った(Hosoya et al, Sci Rep 2016, Neurosci Res 2016, in revision, Suzuki et al, submitted)。
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