近年、米国を中心として消化管や生殖器、皮膚組織などのmicrobiome(宿主に生存する微生物コミュニティの構成ゲノムの総称)を検討し、疾患の発生や予防機序に応用する試みが行われており、特に肥満や糖尿病などの代謝疾患で研究が進んでいる。中耳は気道粘膜の延長であり、中耳粘膜には種々の細菌が棲み中耳炎の発症や遷延化に深く関わっていると考えられる。ところが実際に培養できる微生物は10%以下であり、培養できない細菌が中耳炎の遷延化、中耳真珠腫の発症に影響を与えている可能性は大きい。しかしこれまでのところ中耳粘膜におけるmicrobiomeの検討はほとんど行われていない。本研究では手術時に得られた組織標本から中耳粘膜のmicrobiomeを真珠腫例、非真珠腫例との間で比較検討し、真珠腫に特異的なmicrobiomeを明らかにすることを目的とする。 真珠腫30例、非真珠腫30例から組織を採取し、DNA精製を行い、細菌特異的遺伝子 16s rRNA の存在を全例より確認した。シーケンサーにて解析、遺伝子配列の決定を行い、細菌種の同定を行っている。解析結果が膨大なため、真珠腫・非真珠腫におけるmicrobiomeの差異については今なお検討中である。
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