研究課題
1)2013年6月から9月にかけて福島県、愛知県、広島県の天然アユを採取した。また、福島県いわき市沖を始めとした日本各地で、イシモチ、キス、サバ、カワハギ、アジ、タイ(鯛)などの海水魚を採取した。2)採取した魚の耳石中に含まれるストロンチウム(Sr)、プルトニウム(Pt)、ウラン(U)など11種類の元素について、レーザーアブレーションICP/MSを用いて分析した。3)分析の結果、福島産のアユのほうが、広島産に比べてSr/Ca比は高かったが、有意なものではなかった。過去の報告(原発事故前、広島産アユ)と比較しても明らかな増加は見られなかった。福島県いわき市沖で採取した鯛2匹(セシウム137濃度;8.7±1.3 Bq/Kg)においても、耳石Sr/Ca比に明らかな増加は見られなかった。4)PtやUはすべての耳石で不検出(検出限界値以下)だった。5)原発事故後の魚類における放射能汚染の問題は、社会的関心が高い一方で、正確な分析を可能とする環境が極めて限られている。引き続き試料(魚)の採取とストロンチウムやセシウム濃度の測定を続けていく予定である。
3: やや遅れている
通常、セシウム濃度の測定には1キロ程度のまとまった試料が必要とされる。さかな1匹(アユ:約30から50グラム)ごとに、セシウム濃度を測定するためのセッティングに時間がかかったため、魚体のセシウム濃度の測定が遅れている。
放射性セシウムが内耳(耳石)へ取り込まれる際のメカニズム解明と、抗酸化物質によるセシウム障害の抑制作用の解明材料としては、オタマジャクシおよびカエルの内耳(耳石)を使用する。内耳(耳石を含む)を器官培養後、放射性セシウムを添加し、セシウムが取り込まれる状況を詳細に検討し、取り込み阻害やセシウムがもたらす障害の抑制が可能かどうかを明らかにすることを目的とする。具体的には1)セシウムの取り込みが培養早期(24時間以内)から起こるのかどうか、また、添加する濃度(1~100 mg/L)を変化させ、濃度依存的に取り込み量が増加するのかを検討。2)内耳のどの部分でセシウムがもっとも取り込まれたかを、SEM-EDXで判定。3)カリウムチャンネルブロッカーの4-アミノピリジン(1mM)の添加で、セシウム取り込みが何%抑制されるのかを明らかにする。4)抗酸化物質(アスタキサンチン、アセチルシステイン、セレン、ジピコリン酸など)の添加で、セシウム処理にもかかわらず、暗細胞や支持細胞など、内耳の様々な細胞の障害が軽減されるかどうかも、MTT法やDNA損傷モノクローナル抗体などを使用し、メカニズムを含めて解明。5)セシウムと抗酸化物質が、後半規管の膨大部神経の活動電位に及ぼす影響について明らかにする。6)さらに、体内へのセシウム取り込みにより心臓や腎臓の微小循環系の血流システムが途絶することが明らかになっているので、オタマジャクシの段階でセシウムを取り込ませ、その後、カエル内耳の血流測定も実施する予定である。
効率的に予算を執行できたことに加えて、少し研究計画の実施状況が遅れているため、次年度使用額が生じた。「原発事故後のアユ魚体におけるセシウム濃度に関する研究」の完遂のために使用する予定である。
すべて 2013
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