研究課題
研究代表者はこれまで、「加齢性難聴にエピジェネティック制御不全が関連する」という独自の仮説に基づき、進行性/加齢性難聴動物モデルDBA/2Jマウスに対するエピジェネティック調節剤投与により、聴力低下の有意な抑制に成功してきた。本研究は同動物モデルを用い、遺伝子発現網羅解析と統計学的遺伝子ネットワークパスウェイ解析を用いて薬理作用の分子機序を解析し、より効果的な進行性/加齢性難聴の予防・治療剤を提案し、その効果を検討することを目的とした。平成24,25年度は薬剤投与・非投与動物群間の蝸牛で網羅的遺伝子発現解析を行い、抽出された複数の候補について、定量的PCR法および免疫組織化学的検証による候補の絞り込みを進めた。また、候補遺伝子産物シグナルが蝸牛組織内で上昇していることを免疫組織化学的手法で確認し、また、ヒストン脱アセチル化酵素Hdacの内耳組織における発現も確認し、投与薬剤が実際に蝸牛内細胞に到達し、直接効果を及ぼしていることを明らかにした。平成26年度はエピジェネティクス調節薬剤投与により有意に蝸牛内で発現量が上昇する分子標的候補Zip4 (Slc39a4)を同定した。 本遺伝子産物は亜鉛トランスポーターをコードしており、内耳組織における発現上昇により細胞への亜鉛イオン取り込みを促進し、細胞機能の維持に関与していると考えられた。Zip4発現上昇作用をもつ緑茶カテキンの主成分エピガロカテキンガレート(EGCG)の投与により、DBA/2Jマウスの聴力低下が有意に抑制され、このときZip4の内耳組織における発現は上昇した。本研究はエピジェネティック調節剤が難聴進行を有意に抑制できること、その主要な分子機構がaip4の内耳組織における発現上昇であること、EGCGの投与によりZip4上昇と難聴進行抑制できることを示した。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
PLOS ONE
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