本研究は、我々が開発した重畳表示型ナビゲーションシステムを発展させ、斜視硬性鏡においても内視鏡下鼻副鼻腔手術をより安全に施行できるようにすることを目的としている。重畳表示型ナビゲーションは、隔壁の奥の構造が透過表示され、病変・危険部位の位置が直感的に把握できるようになっている。本研究成果により、内視鏡下鼻副鼻腔手術における手術操作の的確さを飛躍的にあげ、手術時副損傷を減少させることが期待できる。 本年度では1回/2ヶ月の頻度で臨床実験を施行し、複眼直視硬性内視鏡における重畳表示型ナビゲーションのデータを多く蓄積した。斜視硬性内視鏡における手術では、単眼ではあるが昨年度に作成した位置情報取得のための弯曲したプローベ(弱弯および強弯の2種類)を使用し、上顎洞や前頭洞内における多くの臨床実験データが蓄積できた。毎回、高次元医用画像工学研究所にてカンファレンスを行い、実験結果からの改良点などを話し合い、フィードバックしながら重畳表示型ナビゲーションを改良し精度も向上した。レジストレーション方法を、顔表面をなぞるタッチ式とし、不適切なレジストレーション点は自動的に削除されるように改良された。研究当初のステレオナビゲーションの術中誤差は3~4mmであったが現在は約1mmまで向上している。 しかしながら斜視鏡に複眼のCCDを組み込むことは難しく、複眼の斜視硬性内視鏡の開発は困難であった。そのため最終目標である斜視硬性内視鏡による重畳表示型ナビゲーションの臨床実験は施行できていない。単眼の斜視硬性内視鏡による重畳表示型ナビゲーションの臨床実験は施行できており、複眼の斜視硬性内視鏡が開発できればすぐに重畳表示型ナビゲーションを導入できる状況である。今後も複眼の斜視硬性内視鏡の開発を継続していく予定である。そのうえで、これまでの研究成果を論文として報告する予定である。
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