呼吸器における慢性副鼻腔炎には線維芽細胞が増殖している。線維芽細胞増殖はそれらの病態形成において、増殖やサイトカイン産生を通し主役をなすが、増殖の機序は不明である。線維芽細胞は、例えば癌細胞のように細胞自身の増殖能が増強しているとされている。コリンは細胞にとって必須栄養素であり、細胞膜のリン脂質の合成に利用される。最近、コリン代謝と細胞増殖の関連が指摘されている。新規コリントランスポ-タ-であるcholine transporter-like proteinが癌細胞のコリン輸送を担っており、その輸送機能を抑制すると細胞増殖抑制やアポト-シスをおこす。本研究は、鼻茸線維芽細胞のコリントランスポ-タ-の発現を検討し、特異的に発現するコリントランスポ-タ-を標的として線維芽細胞増殖を制御することで、新たな呼吸器疾患治療戦略を開発することを目的とする。 鼻茸由来線維芽細胞には高親和性と低親和性の2種類の取り込み機構が存在していた。すなわちcholine transporter-like protein (CTL1)およびCTL2であった。培地をコリン添加のものと、コリン非添加のものに分けると、コリン非添加の培地では、コリン添加の培地と比較して、有意に線維芽細胞の増殖細胞が抑制され、またアポト-シスを介する細胞死が誘導されたいた。鼻茸においては、CTL1とCTL2の2種類のコリントランスポーターが存在し、それらが機能的に働き、鼻茸線維芽細胞増殖に関与していることが分かった。
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