研究課題/領域番号 |
24592588
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
折舘 伸彦 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90312355)
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研究分担者 |
梨本 正之 新潟薬科大学, 応用生物科学部, 教授 (30228069)
田村 正人 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30236757)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TRUE gene silencing / 頭頸部癌細胞 / サイクリンD1 / 遺伝子発現抑制法 / tRNase ZL / small guide RNA |
研究概要 |
頭頸部癌は世界では年間50万人以上が罹患し,日本では年間およそ1万人以上が罹患している.現在,頭頸部癌の治療としては手術,放射線治療,化学治療の3つがあり,これらを複合的に組み合わせて行われている.近年,各治療法の進歩が認められるものの,予後に関しては、この20年で著しい改善は認められていないのが現状である.その原因の一端として頭頸部癌の抗癌剤抵抗性が挙げられており,より効果の高い薬剤の開発が望まれている.これまでの研究から,一部の頭頸部癌細胞では,細胞周期の進行制御に関与するタンパク質であるサイクリンD1(CCND1)が過剰発現し,その過剰発現が予後不良因子であることが報告されている.このため,CCND1の発現を抑制することにより予後が改善され得る可能性も考えられ,CCND1を標的とした分子標的薬やRNA干渉等の研究が行われてきた.しかしながら,効果的な薬剤の開発が困難なため,これまで臨床への応用が進んでいないのが現状である.そこで本研究では,RNA干渉等に比較してより容易で低コストの遺伝子発現抑制法であるTRUE gene silencing法に着目した.本研究ではTRUE gene silencing法を用いCCND1を標的とした数種のsgRNAを設計し,頭頸部癌細胞培養系においてこれらの導入によるCCND1発現抑制および増殖抑制作用を調べるとともに,抗癌剤との併用による効果を明らかにすることを目的とした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HSC-2およびHSC-3細胞いずれの細胞でも,CCND1 mRNA量は,siRNAの効果には及ばないものの各種sgRNAの導入によって20-70%のレベルに低下した.これらのsgRNAのCCND1発現抑制効果は,lipofectamineを用いないで培地に加えただけの場合でも認められた.設計したsgRNAの標的部位によって抑制効果には差があり,HT型では,HT-2, HT-5による抑制効果が大きかった.sgRNAのHT型,H型およびL型の違いはCCND1発現抑制活性には大きな差異は認められなかった.Western blotによる検討から,sgRNAの導入によってCCND1のタンパク質レベルも低下した.HSC-2およびHSC-3細胞いずれの細胞でも,抗癌剤であるCDDPを加え培養すると生細胞数が減少したが,同時に各種sgRNAを導入したところ生細胞数はCCDP単独時に比べ,さらに減少した.また,各種sgRNA の導入によって,細胞のCapase3/7活性が増加した.しかしながら,培養上清中のIFN-αはsgRNAの導入による誘導は認められなかった. これまでの研究から,新しい遺伝子発現制御法であるTRUE gene silencing法を用い, 適切に設計されたsgRNAの導入によって,頭頸部癌細胞であるHSC-2およびHSC-3細胞においてCCND1の発現を抑制させ,生細胞数を減少させることが明らかになった.また,CCDPと併用することによって,癌細胞数をさらに減少させたことから,sgRNAは抗癌剤の感受性を増大させている可能性が考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
15種類のsgRNAのなかから最も癌抑制活性の高いsgRNAを見いだす.sgRNAの活性がtRNaseZLに依存するかについて,siRNAを用いてtRNaseZLをノックダウンして,CCND1発現と生細胞数を評価する.また,colony forming assayを行いsgRNAがコロニー形成能に影響を及ぼすか検討する.他の頭頸部癌細胞でも,これらsgRNAによる癌抑制活性が認められるかについても検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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