研究課題/領域番号 |
24592590
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
関 直彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345013)
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研究分担者 |
花澤 豊行 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90272327)
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キーワード | マイクロRNA / 頭頸部扁平上皮癌 / 転移 / 癌抑制遺伝子 / 分子ネットワーク |
研究概要 |
ヒトゲノム解析研究の成果として、ヒトゲノム中には、蛋白をコードしない機能性RNA分子が多数存在する事が示された。この中で、マイクロRNAと呼ばれるRNA分子は、19~22塩基程度の1本鎖RNAであり、その機能は、蛋白コード遺伝子に配列依存的に結合し、分解や翻訳阻害により標的となる遺伝子の発現制御を行う事である。1種類のマイクロRNAは、数十~数千の蛋白コード遺伝子の発現制御を行う事が示唆されている。そのため、マイクロRNAの発現異常は、細胞内のRNAネットワーク(マイクロRNA-蛋白コード遺伝子)の破綻を引き起こす。ヒト癌を含め様々な疾患において、マイクロRNAの発現異常が報告されており、細胞内のRNAネットワークの破綻が疾患の発生や進展に大きな役割を担っている事が明らかとなってきた。 この様な背景を基に、我々は、頭頸部扁平上皮癌患者由来のRNAから、マイクロRNA発現プロファイルを作成し、癌細胞において発現変動を認めるマイクロRNAを探索してきた。さらに、癌細胞において発現が抑制されているマイクロRNAに着目し、その機能解析から「癌抑制型マイクロRNA」を見出してきた実績を有する。これまでに、microRNA-1、microRNA-133a、microRNA-218が、頭頸部扁平上皮癌における「癌抑制型マイクロRNA」である事を証明し論文発表してきた。今回は、マイクロRNA発現プロファイルにおいて、発現抑制を認めたmicroRNA-29に着目し、頭頸部癌由来細胞株を用いた機能解析を施行した。また、microRNA-29が制御する分子ネットワークについて、ゲノム科学的手法を用いて解析し、microRNA-29が制御する分子ネットワークを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が独自に作成した、頭頸部扁平上皮癌・マイクロRNA発現プロファイルから、発現抑制が認められたmicroRNA-29に着目した。頭頸部癌由来細胞株を用いた機能解析から、microRNA-29は、癌細胞の浸潤や遊走を抑制する「癌転移抑制型マイクロRNA」である事を見出した。さらに、microRNA-29が制御する分子ネットワークとして、Focal adhesion pathwayを見出した。この分子経路の中で、ラミニン-インテグリンの経路の活性化が癌細胞の浸潤や遊走に重要であり、microRNA-29は、ラミニン-インテグリンの経路のLAMC2とITGA6を直接制御する事により、癌細胞の浸潤や遊走を抑制する事を証明した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果として、頭頸部扁平上皮癌における「癌転移抑制型マイクロRNA」として、microRNA-218およびmicroRNA-29を見出し、in vitroの解析において、その癌抑制機能を証明してきた。次のステップとして、これら「癌転移抑制型マイクロRNA」のin vivoにおける解析を施行し、動物モデルにおける癌抑制機能を証明する事である。これまでのin vitro解析で示された、癌抑制型マイクロRNAが制御する分子ネットワークの遮断が治療として有効であるか、動物モデルで証明する事は重要である。研究最終年度は、これまでの成果として見出した、癌転移抑制型マイクロRNA(microRNA-218およびmicroRNA-29)のin vivo解析を中心に研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究試薬の節約が可能であったため。 発現ベクター作成費用として使用する。
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