研究課題
ヒトゲノム中に存在には、蛋白をコードしない機能性RNAが多数存在し、転写されている事が示された。機能性RNAの中で、マイクロRNAに分類される低分子核酸(19塩基~22塩基)は、蛋白コード遺伝子の発現を、mRNAの分解や翻訳阻害により制御している。一つのマイクロRNAは、数十から数百の蛋白コード遺伝子の発現を制御しており、ゲノム中に存在する遺伝子の半数以上がマイクロRNAの制御を受けている。そのため、マイクロRNAの発現異常は、細胞内の蛋白コード遺伝子・マイクロRNAの分子ネットワークの破綻を引き起こす。癌を含む様々なヒト疾患の発症や進展には、細胞内のマイクロRNAの発現異常が深く関わっている事が示され注目されている。今回我々は、頭頸部扁平上皮癌の中でも予後不良癌である下咽頭癌に着目し、下咽頭癌における「癌抑制型マイクロRNA」の探索を試みた。先ず、下咽頭癌臨床検体(22症例)から、下咽頭癌マイクロRNA発現プロファイルを作成した。この中で、これまで下咽頭癌での報告の無いmicroRNA-451aについて機能解析を施行した。その結果、microRNA-451aは、癌細胞の遊走や浸潤に関与する「癌転移抑制型マイクロRNA」である事が示された。更に、ゲノム科学的手法により、microRNA-451aが直接制御する遺伝子として、ESDN/DCBLD2を探索した。 ESDN/DCBLD2は、下咽頭癌臨床検体で有意に発現上昇しており、この遺伝子をノックダウンする事により癌細胞の遊走・浸潤能が抑制された事から、癌遺伝子機能を有する事が強く示唆された。本研究から、下咽頭癌における新規分子ネットワークとして、microRNA-451a- ESDN/DCBLD2の経路を見出した。これらのネットワークは、癌細胞の遊走や浸潤に深く関与しており、これら分子経路の更なる解明が下咽頭癌の治療戦略に役立つと考える。
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