研究課題/領域番号 |
24592591
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
成田 憲彦 福井大学, 医学部, 助教 (80345678)
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研究分担者 |
松本 英樹 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 准教授 (40142377)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | PCBP4 |
研究概要 |
頭頸部癌(上顎癌)細胞株IMC3からシスプラチン高度耐性株IMC3CRを樹立した。フローサイトメトリーの結果、IMC3CRをシスプラチン処理すると、野生株に比べて優位にG2/M arrestが誘導されアポトーシスが回避されている可能性が示された。またPCR arrayの結果から、IMC3CRにシスプラチンを添加した際に、PCBP4の発現が2倍以上に増加する事を見出した。PCBP4は複数種の癌においてG2/M arrestを誘導するとの過去の報告から、この分子の高発現がIMC3CRにおいてシスプラチン処理後、G2/M arrestとその間のDNA修復を誘導し、アポトーシス回避に寄与すると考えた。 PCBP4の機能解析のためRNAiによりPCBP4を抑制し、MTT assayを施行した。その結果、PCBP4を抑制することで、シスプラチン処理後のIMC3CRの細胞生存率は約1/2に著明に減少することが解った。また、RNAiでPCBP4を抑制すると、シスプラチン処理後に誘導されるG2/M arrestが解除され、アポトーシス(sub G1)に移行することが判明した。次にPCBP4を強制発現するベクターを作成し、野生株IMC3にトランスフェスフェクションした。得られたPCBP4強発現株(IMC3-PCBP4)において、フローサイトメトリーによる細胞周期解析を行うと、シスプラチン刺激後に、IMC3よりもG2/M arrestが有意に誘導され、アポトーシスが減弱することが判明した。またMTT assayにおいても、IMC3-PCBP4はIMC3CRと同程度のシスプラチン耐性を獲得していることが明らかになった。このことからPCBP4は頭頸部癌シスプラチン耐性において重要な働きをしており、この分子を抑制することでシスプラチン耐性頭頸部癌に対する分子標的治療に発展できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画通りにデータが蓄積されている状況である。PCBP4強制発現株は現時点で完成しており、当初の計画より進行している。
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今後の研究の推進方策 |
PCBP4強制発現株はすでに完成しているので、今後はシスプラチン耐性に関与する機能解析を続行する。また研究の質を高めるために、PCBP4の下流に存在し、実際に細胞周期のG2/M停止を誘導する分子を解明したいと考えている。このためにはRNP immunoprecipitation assay (RIP assay)を行い、実際にPCBP4蛋白に結合するmRNAを同定する必要がある。確認には免疫沈降後RT-PCRを行う。現時点で細胞周期調節因子に焦点を絞り、初期データを得ている。
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次年度の研究費の使用計画 |
RIP assayに必要な試薬、抗体、PCRプライマーを購入する。複数種のPCBP4強制発現株を作成するために必要な、培養液、試薬を購入する。
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