研究課題/領域番号 |
24592593
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
海沼 和幸 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (30334907)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 頭頸部腫瘍 / 唾液腺癌 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
唾液腺悪性腫瘍は稀な疾患であり、その病理組織型は極めて多彩である。予後は進展度のみでなくその組織型によって大きな差を認める。根治療法は手術であるが、顔面神経の処理や頸部郭清の併用など組織型ごとに術式を検討することが必要とされている。一般的に切開生検は限定した症例への施行が多く、臨床所見、画像所見、FNAの結果を総合判断する現状の術前診断では正確な組織型の診断に限界があり、新しい術前診断法が求められている。 平成24年度は、前年度までに当科で根治的手術を行った大唾液腺癌20例(腺様嚢胞癌4例、粘表皮癌4例、唾液腺導管癌5例、腺房細胞癌4例、腺癌3例)を対象にtotal RNAを抽出し、全遺伝子を網羅したマイクロアレイ(SurePrint G3 Human GE マイクロアレイ 8×60k v2, Agilent Technologies社製)で遺伝子発現解析(Oneway ANOVAにてp値5%以下及び1%以下で遺伝子を絞り込み)を行った。各唾液腺癌の間で有意差の認められた遺伝子群でHierarchical解析を行い、組織型ごとに特異的発現している遺伝子を同定した。また、同定した遺伝子についてRT-PCRを行い、マイクロアレイの結果との一致を検証した。以上の結果より、5種類の唾液腺癌の組織型ごとに遺伝子の発現に大きな差を認め、組織型ごとに特異的発現している遺伝子は術前補助診断へ応用できる可能性が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた唾液腺癌20例(5組織型)のマイクロアレイでの解析が順調に進み、全遺伝子を網羅的に発現解析を行うことが出来、各唾液腺癌の遺伝子発現に関する膨大なデータを得ることができた。また準備していた唾液腺癌20例(5組織型)から今後の追加実験に必要な十分量のmRNAを抽出保存できており、当初の計画どおり研究をすすめることができている。また、マイクロアレイで得られたデータを検証するために行ったRT-PCRの結果もおおむね予想どおりであり、本研究で実施したマイクロアレイ解析が高い品質で実施された事が明らかとなってた。現在、タンパクレベルでの検証を行うために病理プレパラート、抗体の準備を実施している状況であり、次年度以降の研究により更なる成果が期待できる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイから得た膨大な量のデータを統計学的処理することでいろいろな視点でアピローチする計画である。次年度以降はマイクロアレイにより得られたデータを基に、唾液腺腫瘍の分子遺伝学的補助診断に応用可能な遺伝子を同定してRT-PCRで追加実験を行い組織型を分類可能な遺伝子群を絞り込み実際のcDNAを用いて検証していく。また、HER2やEGFRなどの癌関連遺伝子の発現を免疫染色の手法でタンパクレベルでの検証も予定している。また、同時にFNAによる微量検体から分子遺伝学的診断(術前補助診断)に耐えうる質と量のmRNAを得る方法を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロアレイデータの検証および分子遺伝学的補助診断に応用可能な遺伝子群の発現を簡便に測定する研究のためにRT-PCR用の試薬およびプライマー、プローブを購入する予定である。また、HER2やEGFRなどの免疫染色を行うための抗体および、その他試薬類を購入する。また、得られた成果を発表するための学会発表を行う計画である。
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