研究概要 |
唾液腺悪性腫瘍の病理組織型は極めて多彩であり、予後は組織型によって大きな差を認めるため、正確な組織型の診断は非常に重要である。根治療法は手術であるが、顔面神経の処理や頸部郭清の併用など組織型ごとに術式を検討することが必要とされているが、一般的に切開生検は限定した症例への施行が多く、臨床所見、画像所見、FNAの結果を総合判断する現状の術前診断では正確な組織型の診断に限界がある。 本年度は、昨年度までの研究を継続して実施し、当科で根治的手術を行った大唾液腺癌20例(腺様嚢胞癌4例、粘表皮癌4例、唾液腺導管癌5例、腺房細胞癌4例、腺癌3例)を対象に、total RNAを抽出しマイクロアレイ(SurePrint G3 Human GE マイクロアレイ 8×60k v2, Agilent Technologies社製)で遺伝子発現解析を行った。その後クラスタリングを行い、組織型ごとに特異的発現している遺伝子を同定した。同定した遺伝子についてRT-PCRを行い、マイクロアレイの結果との一致を検証した。また、実際に摘出した腫瘍にFNAを施行し、得られた微量検体のRT-PCR解析を行い,組織型の診断が可能かどうか検討を行った。 クラスター解析により組織型ごとに特異的発現している遺伝子から6個(SCGB1D1, SMR3B, MLC1, C1QL2, SOX10, HOXA3)を選び、その遺伝子のRT-PCRによる定量解析を行った。その結果、マイクロアレイの結果に矛盾しない結果が得られた。また、FNA検体においても再現性のある結果が得られた。しかしながら、得られるRNAサンプルが微量であるため、結果が得られない場合もあり、系の改良の必要がある事も明らかとなった。今後、全転写産物増幅法などを組み合わせる事で術前補助診断へ応用できる可能性がある。
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