研究課題/領域番号 |
24592602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鮫島 靖浩 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (50206009)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 嚥下圧 / 高解像度内圧計 |
研究概要 |
喉頭麻痺患者でしばしば認める咽頭残留の原因として咽頭筋の機能不全が考えられるが、その解析には咽頭から食道入口部の詳細な嚥下圧測定が必要である。最新の細径の高解像度内圧計(ManoScan 36ch system、2.64mm径)を用いると詳細な検討が可能であるが、まだ正常者における咽頭圧の報告はない。本年度は正常者の咽頭から頸部食道までの嚥下圧を計測した。 健常成人30名、23歳~33歳、男性15名、女性15名を対象とした。被験者に唾液、2mL・5mL・10mLの温水(35℃)と冷水(0℃)を嚥下させ、専用の解析ソフトを用いて解析した。 嚥下圧は嚥下する量・温度に関係なく一定の嚥下圧を示したが、UESの平圧化持続時間は嚥下する量が増加すると延長した。嚥下量が増加するとより強い駆出力を必要とするが、この強い駆出力はUESの平圧化持続時間延長による圧勾配で得ていることが示唆された。嚥下圧曲線を描出すると、男性は軟口蓋とUESにピークを持つ2峰性、女性はUESのみにピークを持つ1峰性の曲線で男女差を認めた。軟口蓋の嚥下圧にも性差があり、嚥下障害者の評価を行う際は、男女を区別して検討する必要がある。 旧来の受圧部が一方向のセンサーの測定装置と比較して有意に高圧を示した。また、最近の太径(4.2mm)の高解像度マノメトリによる先行研究の結果と比較するとUESの最大内圧と静止時圧が有意に低く、さらにバラツキも小さく、嚥下運動への影響が少なく安定した圧力を計測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目的であった計画1の健常者30名を対象とした嚥下圧の基礎データの収集と解析はおおむね達成できた。しかし、測定項目は唾液嚥下、水嚥下(嚥下量が3㏄、5㏄、10㏄)、冷水と温水、頸部正面視、頸部前屈位、頸部回旋位(左右)、息こらえ嚥下など多数あるため、一度の検査ではすべてを実施的できなかった。そこで初年度は、基本的な正面視による唾液嚥下、水嚥下の嚥下量による違い、温水と冷水による違いに焦点を置き、安静時のUES圧、嚥下時の各部位の最大嚥下圧、嚥下時のUESの平圧化持続時間、嚥下圧曲線、嚥下圧伝搬曲線を解析した。この結果の一部は、第57回日本音声言語医学会と第36回日本嚥下医学会で発表し、嚥下医学1巻2号に論文掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
1)まず、初年度(平成24年度)に行った健常者30名の基礎的データの集計と解析結果は、国際学会で発表して英文雑誌に投稿する。 2)平成25年度は計画1の中で、初年度に達成できなかった頸部前屈位、頸部回旋位(左右)、息こらえ嚥下などのリハビリテーション手技を行いながら嚥下圧を測定し、 安静時のUES圧、嚥下時の各部位の最大嚥下圧、嚥下時のUESの平圧化持続時間、嚥下圧曲線、嚥下圧伝搬曲線を検討する。この結果を先に行った正面視のデータと比較して、リハビリテーション手技の効果の客観的根拠を明らかにする。この結果についても学会発表を行う予定である。 3)計画2として、一側喉頭麻痺患者における嚥下圧測定とリハビリテーション手技の効果を検討する。方法は、①嚥下に関する自覚症状の問診、②嚥下内視鏡および嚥下造影検査による嚥下機能評価、さらに計画1と同様の方法で③咽頭食道内圧測定検査を行う。高解像度咽頭食道内圧計による測定項目を健常者の正常値と比較し、喉頭麻痺患者の嚥下障害の病態を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として、高解像度咽頭食道内圧計を保護し感染を防止するマノシールド、消毒液、嚥下材料の粘度を調整するとろみ添加剤、データを記録する記録メディアなどの消耗品を購入する代金として200,000円を予定する。 旅費として、嚥下医学会、音声言語医学会、喉頭科学会の発表のための出張旅費に300,000円を計画している。 その他として、英文論文校閲費用、別冊費用として100,000円を計画している。
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