研究課題/領域番号 |
24592602
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鮫島 靖浩 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (50206009)
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キーワード | 嚥下圧 / 高解像度内圧計 / 嚥下リハビリテーション / 喉頭麻痺 |
研究概要 |
計画1の「正常ボランティアに対する正常嚥下圧測定およびリハビリテーション手技による嚥下圧の変化」のうち前年度にまとめた、健常者30名(男性15名、女性15名)の正面視における唾液嚥下、温水嚥下(2cc、5cc、10cc)、冷水嚥下(2cc、5cc、10cc)については、米国喉頭科学会(2013年4月10日)、第58回日本音声言語医学会で報告し、英文雑誌The Laryngoscape 124, 2014, 711-717に掲載した。計画1のうちChin downとよばれる頸部を前屈する姿勢は、頭部屈曲位、頸部屈曲位複合屈曲位等の肢位の総称であり、その効果も異なることが推測された。このため平成25年度は、この3つの肢位を区別して検討を行った。その結果、頭部屈曲位では舌根部の圧が優位に上昇したが、食道入口部括約筋(UES)の最大圧は高く、UESの平圧化時間は短く、必ずしも嚥下に有利とはいえなかった。各肢位の有効性については症例を増やして検討を続行している。 計画2の「一側喉頭麻痺患者における嚥下圧測定とリハビリテーション手技の効果」に関しては4例に高解像度咽頭食道内圧測定を行った。一側声帯麻痺単独麻痺では圧の異常は少なかったが、下位脳神経麻痺を伴う混合性喉頭麻痺では上咽頭圧、中下咽頭圧の著明な低下や、食道入口部の開大異常が見られた。一側喉頭麻痺例における嚥下障害の評価を嚥下造影検査の咽頭残留で検討すると胸部疾患による反回神経単独麻痺に比べて特発性喉頭麻痺では咽頭残留が多く病態の違いがみられ、特発性喉頭麻痺では迷走神経の障害が疑われた。この内容は、Laryngoscope 123, 2013, 2776-2779に掲載した。さらに一側喉頭麻痺の嚥下圧については症例を増やして検討を続行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画1の「正常ボランティアに対する正常嚥下圧測定およびリハビリテーション手技による嚥下圧の変化」のうち前年度に実施した、健常者30名の正面視における唾液嚥下、温水および冷水嚥下(それぞれ2cc、5cc、10cc)については、米国喉頭科学会(2013年4月10日)、第58回日本音声言語医学会で報告し、The Laryngoscape 124, 2014, 711-717に掲載され、予定通り進行している。計画1のうちChin downとよばれる頸部を前屈する姿勢は施設、国の違いにより様々な肢位があり一定しておらず、頭部屈曲位、頸部屈曲位、複合屈曲位等の肢位の総称であり、その効果も異なることが推測された。このため平成25年度は、この3つの肢位を区別して検討を行った。この結果の一部は、第58回日本音声言語医学会・学術講演会で報告したが、さらに症例を増やす予定である。 計画2の「一側喉頭麻痺患者における嚥下圧測定とリハビリテーション手技の効果」に関しては4例に高解像度咽頭食道内圧測定を行ったが、一側声帯麻痺単独麻痺では圧の異常は少なく、下位脳神経麻痺を伴う混合性喉頭麻痺では上咽頭圧、中下咽頭圧の著明な低下や、食道入口部の開大異常が見られた。嚥下造影検査の咽頭残留で検討すると胸部疾患による反回神経単独麻痺に比べて特発性喉頭麻痺では咽頭残留が多く病態の違いがみられ、この内容は、Laryngoscope 123, 2013, 2776-2779に掲載された。 以上、当初の計画通りではないが、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)まず、初年度(平成24年度)にここなった健常者30名の基礎データのうち、嚥下圧伝搬曲線の研究は一部しか発表してないので、国際学会で発表し、英文論文に投稿する。 2)計画1のうち頸部を前屈する姿勢(頭部前屈位、頸部前屈位、複合屈曲位)について症例を増やし、それぞれの肢位の効果とリハビリにおける有用性について検討する。これらをまとめて学会発表と論文投稿を行う。 3)計画2の「一側喉頭麻痺患者における嚥下圧測定とリハビリテーション手技の効果」については、反回神経麻痺による一側喉頭麻痺と下位脳神経麻痺を伴う混合性喉頭麻痺を比較する形で、高解像度咽頭食道内圧測定を行いその病態を解明する。また、嚥下造影検査における咽頭残留を、胸部疾患における反回神経単独麻痺と混合性喉頭麻痺の比較を行いその違いについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
高解像度咽頭食道内圧計を保護し感染を防止する滅菌カテーテルシース(マノシールド)を検査延べ人数分購入予定であったが、装着が難しく計測器を破損する危険があったため、従来の消毒液による消毒で対応した。そのためマノシールドの購入費が不要となった。また、嚥下造影や嚥下内視鏡などで食形態を調整するテストフードが見積もり価格より低額であった。以上の理由から次年度使用額が生じた。 平成26年度は正常者における頭位が嚥下に及ぼす影響について症例を増やして検討を行う。また、一側喉頭麻痺患者において反回神経単独麻痺と混合性喉頭麻痺を比較することで嚥下機能障害の病態の違いを高解像度咽頭食道内圧測定により解明する。これらに平成25年度から持ち越した研究費を使用する予定である。
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