「正常ボランティアに対する正常嚥下圧測定およびリハビリテーション手技による嚥下圧の変化」:嚥下圧伝搬曲線は軟口蓋部から頸部食道までの嚥下圧ピークの時間的推移を表したもので、嚥下障害患者の病態評価に有用であるが国際的な報告はない。正常ボランティアで行った高解像度内圧計(HRM)のデータから嚥下圧伝搬曲線の正常値をもとめ、その臨床応用の可能性について米国喉頭科学会(2014年5月15日)で発表した。 リハビリテーション手技のうち「強い息こらえ嚥下」は声門閉鎖を強化する嚥下法であるが、正常ボランティアの検討では、食道入口部の最大内圧や平圧化には影響を与えず、軟口蓋部、中下咽頭部の嚥下時最大内圧を上昇させた。これから「強い息こらえ嚥下」は誤嚥防止だけでなく、食塊の残留除去にも有用なことが明らかとなり、第59回日本音声言語医学会(2014年10月9日)で報告した。 Chin downとよばれる頸部を前屈する姿勢は、頭部・頸部の位置により各部位の嚥下圧が異なることが判明した。頭位・頸位を詳しく分類して平成27年度以降の基盤研究で解明することとした。 「一側喉頭麻痺患者における嚥下圧測定とリハビリテーション手技の効果」:一側喉頭麻痺で下位脳神経麻痺を伴う例をHRMで解析し、嚥下機能改善手術で改善後に再度測定して比較した。術前は軟口蓋部から中下咽頭圧の著明な圧低下があり、術後は食道入口部の静止時圧が低下し中下咽頭圧の上昇がみられた。このことは食道入口部の通過の改善だけでなく、食塊を送り込む圧も改善することを示しており、第38回日本嚥下医学会(2015年2月6日)で発表した。 以上から、正常ボランティアの検討からHRMの各パラメータの正常値、嚥下圧伝搬曲線の正常値、強い息こらえ嚥下の効果が判明し、一側声帯麻痺患者では治療前後の圧変化から治療の評価が可能となった。
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