研究課題
喉頭亜全摘出Supracricoid laryngectomy with Cricohyoidoepiglottopexyについて施行症例を集積し、継続して研究をすすめている。以前の研究で得られた、披裂軟骨の可動性、牽引方向、新声門の振動部位などの研究成果を基により良好な機能を目指した手術手技の改良はさらに改良が重ねられ、牽引方法の工夫と、獲得機能の安定化に寄与している。成果はいくつかの論文で報告されている。手術手技改良によっても理想的な声門閉鎖などの機能が得られない症例がある。新声門の閉鎖不全を補うために、頬粘膜から採取された脂肪体の新声門拡大部への注入を試みている。頬粘膜脂肪体は他の脂肪採取部に比べて脂肪細胞が吸収されにくい特徴があるとされている。採取も容易で簡便であった。注入に際し、新声門の多様性の形態学的変化に対応するためナビゲーションシステムによる位置確認を行っている。本システムは頭蓋、鼻腔などの硬組織でのガイドには向いているとされているが、これを世界で初めて頭頸部、咽喉頭領域での適応が手技的に可能であることを実証した。また、新声門への脂肪の注入量、注入部位、角度についても検証を行った。脂肪注入による温存機能の評価も合わせて行い、良好な結果を確認した。過去40年間の喉頭癌症例、1000例の検証も行われ、849例を抽出し10年おきの粗生存率、喉頭温存率についても解析した。その結果、喉頭温存率は初期に比べて、最近10年では有意な差を持って改善が認められており、亜全摘出が大きく貢献している結果が抽出され、世界に向けて論文発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
喉頭癌全体の治療概念の中で喉頭亜全摘出術がどれだけ貢献しているか、解析することに成功した。良好な温存率、粗生存率の改善も認められ、亜全摘出を中心とした喉頭癌治療の構築、方向性に間違いがなかったことは明らかとなった。今後は再発率がやや高まる進行喉頭癌、放射線照射後の救済手術の成績の向上について、対策を検討する必要があり、より安定した治療概念に向けた取り組みの目標を立てた。
喉頭亜全摘出Supracricoid laryngectomy with Cricohyoidoepiglottopexyについて施行症例をさらに集積し、経験を増やしたいと考えている。より良好な機能を目指した手術手技の改良は未だ課題もあり、引き続き検討を進める必要がある。研究成果を定期的に世界的学会誌に投稿し、公開したいと考えている。より安定した喉頭癌治療体系の確立を目指して、亜全摘出術、化学放射線治療の適応について、さらに検討を進める。国際学会への研究成果の報告、情報収集の目的にも使用を計上したい。海外雑誌への投稿に関連する費用も計上を予定している。
研究が継続しており、多少額の繰り越しが生じた。最終年度に向けて、結果発表のために国内、国際学会への参加が増加することが想定され、繰越額の有効活用を計上している。今年度は米国ニューヨークでの国際頭頸部癌学会、フランスパリでのフランス耳鼻咽喉科学会のでの発表を予定している。繰越金の活用を想定している。
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Jpn J Clin Oncol
巻: 44(1) ページ: 57-64
10.1093/jjco/hyt162
巻: 43(8) ページ: 782-787
10.1093/jjco/hyt081