研究課題/領域番号 |
24592609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
吉武 洋 日本医科大学, 医学部, 講師 (00396574)
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研究分担者 |
荒木 慶彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250933)
横井 秀格 杏林大学, 医学部, 准教授 (80317487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | TEX101 / 頭頸部癌 / 癌・精巣抗原 / 癌マーカー |
研究概要 |
TEX101は、我々が世界に先駆けて同定した生殖細胞マーカー糖タンパク質である。本分子は生殖細胞以外の正常組織には発現せず、かつ雌雄生殖細胞の発生段階で発現パターンが変化することから、配偶子形成あるいは受精過程に重要な役割を果たしていると考えられてきた。さらに我々はTEX101は、頭頸部扁平上皮癌においてそれらの症例の80%以上の癌組織において発現していることを見いだし、本分子が新規の癌関連抗原(癌・精巣抗原)であることを報告している。TEX101遺伝子欠損マウスを用いた解析では、それらのマウスは雄性不妊を示し、その原因は精子の卵管移行障害によることが明らかとなった。TEX101は精子形成過程においてADAM3と分子関連しており、またその発現はアンギオテンシン変換酵素により制御されていることが明らかとなった。 本分子はそのアミノ酸配列中にシステインリッチドメインを有するGPIアンカー型タンパク質であり、Ly-6/uPARファミリーに属する分子である。この分子群の一部は、細胞接着・遊走制御能を有することが知られている。また頭頸部扁平上皮癌症例におけるTEX101発現の有無と各臨床症状との関連を解析したところ、性別・年齢・原発部位・腫瘍サイズとは関係性を認めなかったが、頸部リンパ節転移症例において本分子の発現頻度が低下している傾向を認めた。以上の結果から、TEX101は癌細胞においては、そのエフェクター分子(例えば精巣におけるADAM3のような分子)を介して、細胞接着・遊走制御に関与している可能性が想像される。今後本分子を標的としたミサイル療法開発のための基礎データを得ることを目的に、癌細胞浸潤・転移抑制能を有する抗ヒトTEX101単クローン抗体の作製を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は新規癌・精巣抗原TEX101を標的とした、頭頸部癌のミサイル療法開発を目的に開始された。TEX101の生物学的機能解析については、TEX101遺伝子欠損マウスを用いた解析によって、本分子の分子活性及びその発現制御機構が明らかとなった。これらの実験結果及びヒト頭頸部癌組織における発現動態を基盤にして考察すると、TEX101は細胞接着・遊走にも関与していることを示唆しており、このことは本分子の頭頸部癌ミサイル療法標的分子としての有用性を示している。現在TEX101に対する単クローン抗体の樹立を目指しており、研究はほぼ順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
手術によって採取した癌組織より癌細胞を分離、継代培養し、頭頸部癌由来細胞株を樹立する。樹立した細胞株はRT-PCR及びフローサイトメトリーを用いて、TEX101発現株・非発現株に分類する。作製したTEX101発現細胞から抗TEX101多クローン抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィーによりTEX101を精製する。これを雌BALB/cマウスに免疫した後、脾B細胞と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製する。作製したハイブリドーマが産生する抗体をELISA法でスクリーニングする。さらに樹立した抗体が細胞膜上のTEX101に反応することを確認するため、フローサイトメトリーでTEX101発現癌細胞株に対する反応性を検討し、反応した抗体だけを抗腫瘍抗体製剤の候補としてストックする予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は手術により採取した癌組織の一部より癌細胞を分離・継代培養し、TEX101発現頭頸部癌由来細胞株を樹立する予定であった。しかし当該年度中に本細胞株の樹立が困難であり、従って本年度に計画していたTEX101発現細胞株を用いた研究遂行が不可能であった。次年度においては、採取する癌細胞数を増やして引き続きTEX101発現細胞株の樹立を目指す予定である。樹立後に本年度遂行予定であったボイデンチャンバー法とマトリゲル法を用いたTEX101発現及び非発現細胞株の接着・浸潤能の評価を行う計画である。
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