研究課題/領域番号 |
24592611
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
粟飯原 輝人 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30268619)
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研究分担者 |
平塚 純一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30192298)
大西 かよ子 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (60529832)
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 加速器中性子源 / 原子炉中性子源 / 頭頸部癌 / ホウ素化合物 |
研究概要 |
頭頸部領域は機能上・美容上その温存が大変重要であり、現在の頭頸部癌治療の主流である外科的治療、放射線治療、抗癌剤治療の3者を至適に組み合わせる方法で治療が行われている。しかし、放射線や抗癌剤治療に対する治療効果が確立されていない非扁平上皮癌疾患や、進行頭頸部癌では腫瘍の拡大全摘手術が根治を目指す主な治療法であり、患者は生命予後と引き替えに、治療後の美容的かつ機能的なQOLの大幅な低下を来しているのが現状である。このような、従来の治療法では制御困難と思われる病巣を、最低限の侵襲で正常臓器を損なうことなく制御できれば、患者の負荷は勿論のこと治療後の高いQOLが期待できる。この目的に合致する治療法として加速器中性子源を用いた硼素中性子捕捉療法(boron neutron capture therapy : BNCT)の頭頸部癌に対する有効性を明らかにするのが本研究の目的である。 我々は「頭頸部腫瘍に対する中性子捕捉療法プロトコ-ルの確立」として本学倫理委員会の承認を得て、2003年10月から頭頸部癌症例のうち、従来の標準頭頚部癌治療を行っても病変が増大する難治性症例17例(扁平上皮癌10例、腺様嚢胞癌2例、乳頭状腺癌2例、腺癌1例、未分化癌1例、粘表皮癌1例)、原子炉で同療法を行い、CR:8例、PR:7例、NC:2例、奏功率:88%と高い局所制御率を認めた。しかしながら、3年生存率15%、5年生存率0%と生命予後に寄与はしなかった。その理由として、再発制御不能頭頸部癌は既に様々な治療を行われており、その結果治療耐性を来している場合や、治療開始時に潜伏した遠隔転移を既にあると考えられた例が多い事が上げられる。 現在川崎医科大学と筑波大学では,加速器照射に向けて原子炉照射の治療効果の再検討を行っており,25年度は8例の頭頸部癌症例に対して同治療を行い,有効性を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた加速器中性子源を使用した頭頸部癌治療の開始が遅れている.しかし,対比となる原子炉中性子源を利用した頭頸部癌治療は予定通りに行われてたため,ほぼ予定通りの達成度である
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今後の研究の推進方策 |
加速器中性子源を利用した本治療は,開始までにまだ時間がかかる見通しである.そのため,現状は従来通りの原子炉中性子源を用いた頭頸部癌治療を行い,引き続き比較となる基礎データーの収集を行う予定である.特に治療4週間後に行う初期治療効果判定における照射後線量評価と,視診・画像診断を用いた治療効果判定,治療前のBPA-PETと治療効果の関連を画像で比較し,腫脹の活動性を推測する方法で,追加治療の必要性を検討する方法で,さらに長い生命予後が期待出来る所見の確率を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
加速器中性子源の開発が遅れたため,加速器を用いた治療前計画と治療が行えなかったため.代替えの原子炉治療も原子炉再稼働が遅れたため,臨床研究再開が遅れたため,次年度繰越になった. 引き続き原子炉によるホウ素中性子捕捉療法の継続と,BPA-PETおよび原子炉ホウ素中性子捕捉療法施行のためのBPA購入のために50万円程度の研究予算を必要とする.また,現在までの研究結果を公表するための学会参加や論文投稿費用で50万円程度の研究予算を必要とする.特に本研究の最終年度のため,論文投稿に重点的に取り組む予定である.
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