超免疫不全マウスを用いた新規頭頚部がん幹細胞マーカー探索と特異的治療法開発

2013 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 24592613
• 研究機関: 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)
• 研究代表者: 松浦 一登 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究部, 特任研究員 (70271947)
• 研究分担者: 田中 伸幸 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究部, 部長 (60280872)
• キーワード: 癌 / 頭頸部癌 / 癌幹細胞

研究概要

頭頸部癌の克服を目的として、頭頸部癌「幹細胞」に焦点を当て、その性状と特徴を明らかとする。頭頸部癌の幹細胞（亜集団）を簡易に同定するマーカーを同定し、幹細胞の細胞生物学的・分子生物学的な検討を行う。さらに、超免疫不全マウス（NOG）を用いてin vivo移植系を駆使し、細胞生物学的解析を加えることで、頭頸部癌の悪性度を司る「癌幹細胞研究」を展開する。以上の解析系を用いて、①新たな頭頸部癌幹細胞マーカーの同定、②特異的幹細胞標的療法の可能性を検証するとともに、③転移・浸潤の可能性を含む予後予測系の開発を目指す。インフォームドコンセントを得た頭頸部がん検体を用いて、コラゲナーゼ、トリプシン、DNase等を使用して腫瘍組織から浮遊細胞を調整した。これら腫瘍塊からサイコロ状に調整した移植片を超免疫不全NOGマウスの皮下に異種移植した。今年度はさらに検体数を１0検体まで増やすことに成功し、NOGマウに頭頸部癌組織が生着した。いずれも皮下で再び腫瘍形成し、３代以上の継代が可能であった。一方、In vitroで培養可能株として、HPCM1, HPCM2がほぼ樹立できた、がん幹細胞マーカー候補として細胞表面分子CD271に着目し、CD271high分画とCD271ow分画を採取しNOGマウスに移植すると、ほぼすべての症例においてhigh分画の腫瘍形成が上昇していた。発現遺伝子プロファイルを検討したところ、幹細胞に発現する遺伝子nanogがCD271high分画で有意に上昇していたほかMMPsの増加が認められた。以上の結果から、頭頸部癌幹細胞マーカー候補CD271は、転移や浸潤にも関わる分子である可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

頭頸部癌幹細胞マーカーの同定に成功し、ほぼ予定通りに解析が進んでいる。

今後の研究の推進方策

幹細胞マーカーに連動する遺伝子やシグナル伝達との関連を検索し、治療標的の探索に注力する予定である。

次年度の研究費の使用計画

研究計画が順調に進んだため、および一部計画順序を変更したため。
がん幹細胞解析およびNOGマウスを用いた解析を次年度集中的に行う予定である。この解析に次年度使用額を充当する。

研究成果

• [雑誌論文] Lymph node metastasis in T4 maxillary sinus squamous cell carcinoma: Incidence and treatment outcome. (2014)
  • 著者名/発表者名: A. Homma, R. Hayashi, K. Matsuura, K. Kato, K. Kawabata, N. Monden, Y. Hasegawa, T. Onitsuka, Y. Fujimoto, S. Iwae, K. Okami, T. Matsuzuka, K. Yoshino, K. Nibu, T. Kato, H. Nishino, T. Asakage, I. Ota, M. Kitamura, A. Kubota, T. Ueda, K. Ikebuchi, A. Watanabe, M. Fujii
  • 雑誌名: Ann Surg Oncol 巻: 5 ページ: 1706-1710
  • DOI: 10.1245/s10434-014-3544-6
  • 査読あり
• [雑誌論文] Effect of HMB/Arg/Gln on the prevention of radiation dermatitis in head and neck cancer patients treated with concurrent chemoradiotherapy. (2014)
  • 著者名/発表者名: T. Imai, K. Matsuura, Y. Asada, S. Sagai, K. Katagiri, E. Ishida, D. Saito, R. Sadayasu, H. Wada and S. Saijo
  • 雑誌名: Jpn J Clin Oncol 巻: 44 ページ: 422-427
  • DOI: 10.1093/jjco/hyu027
  • 査読あり
• [雑誌論文] CD271 defines a stem cell-like population in hypopharyngeal cancer. (2013)
  • 著者名/発表者名: Imai T, Tamai K, Oizumi S, Oyama K, Yamaguchi K, Sato I, Satoh K, Matsuura K, Saijo S, Sugamura K, Tanaka N.
  • 雑誌名: PloS One 巻: 8 ページ: e62002
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0062002
  • 査読あり
• [雑誌論文] Hepatocyte growth factor regulated tyrosine kinase substrate in the peripheral development and function of B-cells (2013)
  • 著者名/発表者名: Nagata T, Murata K, Murata R, Sun SL, Saito Y, Yamaga S, Tanaka N, Tamai K, Moriya K, Kasai N, Sugamura K, Ishii N.
  • 雑誌名: Biochem Biophys Res Commun. 巻: 443 ページ: 351-356
  • DOI: 10.1016/j.bbrc.2013.11.029
  • 査読あり
• [雑誌論文] Enhanced expression of long non-coding RNA HOTAIR is associated with the development of gastric cancer. (2013)
  • 著者名/発表者名: Endo H, Shiroki T, Nakagawa T, Yokoyama M, Tamai K, Yamanami H, Fujiya T, Sato I, Yamaguchi K, Tanaka N, Iijima K, Shimosegawa T, Sugamura K, Satoh K.
  • 雑誌名: PloS One 巻: 443 ページ: e77070
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0077070
  • 査読あり
• [学会発表] 症例から学ぶ-診療のポイントとピットフォール- (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登
  • 学会等名: 第２７回日本耳鼻咽喉科学会専門医講習会
  • 発表場所: 名古屋市
  • 年月日: 20131116-20131117
• [学会発表] 下咽頭癌における新規がん幹細胞表面マーカー”CD271”の同定 (2013)
  • 著者名/発表者名: 今井隆之、玉井恵一、山口壱範、佐藤郁郎、佐藤賢一、松浦一登、西條茂、菅村和夫、田中伸幸
  • 学会等名: 第７２回日本癌学会学術総会
  • 発表場所: 横浜市
  • 年月日: 20131004-20131006
• [学会発表] 頭頸部癌治療における口腔ケアについて (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登
  • 学会等名: 第26回日本口腔・咽頭科学会総会学術講演会
  • 発表場所: 名古屋市
  • 年月日: 20130912-20130913
• [学会発表] 頭頸部清術の新展開 ４.EBMから見た頭頸部清術後の補助治療 (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登
  • 学会等名: 第37回日本頭頸部癌学会
  • 発表場所: 東京都
  • 年月日: 20130613-20130614
• [学会発表] 頭頸部癌治療に対する栄養管理 (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登
  • 学会等名: 第37回日本頭頸部癌学会
  • 発表場所: 東京都
  • 年月日: 20130613-20130614
• [学会発表] 抗がん剤の有害事象対策 (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登
  • 学会等名: 第114回日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
  • 発表場所: 札幌市
  • 年月日: 20130515-20130518
• [図書] 第VII章 各種がんにおける栄養管理 1.頭頸部がん.NST・緩和ケアチームの為の癌栄養管理完全ガイド（比企直樹・土師誠二・向山雄人編） (2014)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登、加藤健吾
  • 総ページ数: p234-244
  • 出版者: 文光堂
• [図書] II.各論A表在癌や他の悪性腫瘍との鑑別を必要とする疾患群８.咽頭白板症.一目でわかる咽頭表在がんアトラス（武藤学・渡邉昭仁編） (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登、野田哲也
  • 総ページ数: ｐ42-43
  • 出版者: 中外医学社
• [図書] II.各論B表在癌例-内視鏡病型と亜部位から-3.0-IIa型赤色調病変.1）中咽頭の０-IIa型①一目でわかる咽頭表在がんアトラス（武藤学・渡邉昭仁編） (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登、野田哲也
  • 総ページ数: ｐ94-95
  • 出版者: 中外医学社
• [図書] II.各論B表在癌例-内視鏡病型と亜部位から-3.0-IIa型赤色調病変.4）下咽頭梨状陥凹の0-IIa型①.一目でわかる咽頭表在がんアトラス（武藤学・渡邉昭仁編） (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登、野田哲也
  • 総ページ数: ｐ100-101
  • 出版者: 中外医学社
• [図書] II.各論B表在癌例-内視鏡病型と亜部位から-3.0-IIa型赤色調病変.7）下咽頭その他部位の0-IIa型①.一目でわかる咽頭表在がんアトラス（武藤学・渡邉昭仁編） (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登、野田哲也
  • 総ページ数: ｐ106-107
  • 出版者: 中外医学社
• [図書] Current Organ Topics Head and Neck Cancer頭頸部癌1.頭頸部癌の化学放射線療法における支持療法-治療中のQOLの向上をめざして- (2013)
  • 著者名/発表者名: 松浦一登
  • 総ページ数: ｐ852-856
  • 出版者: 癌と化学療法社