研究課題/領域番号 |
24592616
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中澤 満 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80180272)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 網膜色素変性 / 網膜疾患 / カルパイン / 視細胞変性 / アポトーシス |
研究概要 |
網膜色素変性に代表される遺伝性網膜変性疾患の新規治療法として視細胞死に働くとされるミトコンドリアカルパイン-1を標的分子としてこれを特異的に阻害するペプチドを作成した。本研究ではこのペプチドに細胞内移行を効率化させるための修飾ペプチドを付加した合成ペプチドを作成し、網膜色素変性モデル動物にてその効果を検討した。 まず、第1に網膜変性モデルとしてRCSラットを用い、ラット眼球へのペプチドの硝子体内注射および点眼投与を行い両治療群と生理食塩水の注射および点眼を施した対照群とで視細胞死の起こり方を比較検討した。視細胞死の評価として組織学的所見、免疫組織化学所見および網膜電図を用いた。 その結果、ペプチド投与群では硝子体内注射および点眼群のいずれもが対照群と比較して、視細胞層の細胞数がよく保存されており、網膜電図の振幅低下速度も有意に遅延することが判明した。 第2に網膜変性モデルとして、ロドプシンS334terとP23Hトランスジェニックラットの2種類のロドプシン変異ラットを用いて同様の実験を行った。その結果、ペプチドの硝子体内注射と点眼群のいずれもが対照群と比べ有意に視細胞変性の遅延させることが判明した。これらの結果からペプチドは少なくとも眼内に送達されさえすれば視細胞死を阻害し、視細胞変性を遅延させる効果をもつことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網膜色素変性モデル動物としてRCSラットとロドプシンS334terおよびP23Hトランスジェニックラットの3種類の遺伝子変異モデルを使用してカルパインペプチドの視細胞保護効果が実際にあることを検証できた。またいずれのモデル動物においても硝子体内注射のみならず点眼にても視細胞保護効果が認められたことは実際の臨床応用の面でも大変有力な手法となり得ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
カルパインペプチドがラット網膜変性モデルにおいて点眼投与によっても眼内に移行することが判明した。この効果がラットのような小動物の眼球にのみみられる現象なのか、その他の中型動物やヒト眼球でも起こる現象なのかを今後の研究によって明らかにしたい。また、非常に基本的なことであるが、点眼によりペプチドがどのような経路で網膜視細胞まで到達するのかを点眼後の眼内移行経路を明らかにすることで検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ウサギ網膜変性を用いた研究を行いたい。実際の網膜色素変性患者から同意を得てiPS細胞を作成し、さらに視細胞を誘導した上で本ペプチドの視細胞変性抑制を検討したいと考えている。
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