網膜色素変性に代表される遺伝性網膜変性疾患の新規治療法として視細胞死に働くとされるミトコンドリアカルパイン-1を標的分子としてこれを特異的に阻害するペプチドを作成した。本研究ではこのペプチドに細胞内移行を効率化させるための修飾ペプチドを付加した合成ペプチドを作成し、網膜色素変性モデル動物にてその効果を検討した。研究初年度では、網膜色素変性モデルとしてRCSラットを用い、ペプチドを硝子体内注射した群と点眼した群に分け、網膜機能の評価に網膜電図を、また網膜形態の評価に組織学的な計測を用いて、両群の網膜保護状況を無処置群と比較した。その結果、硝子体内注射群、点眼群ともに網膜電図、網膜厚およびTUNEL染色いずれにおいても網膜視細胞保護効果が証明できた。 第2年度では、網膜色素変性モデルをRCSラットだけでなく、ロドプシン遺伝子変異導入トランスジェニックラット(P23HラットおよびS334terラット)に拡大し、初年度同様にペプチドの硝子体投与と点眼投与の2群で視細胞死の遅延効果を検討した。その結果、初年度同様ロドプシントランスジェニックラットにおいても網膜電図、網膜厚およびTUNEL染色上、硝子体内投与群および点眼投与群ともに無処置群に比べて有意に網膜保護作用を表していた。 第3年度では点眼効果に着目し、点眼により網膜や後眼部および視神経乳頭へのペプチドの送達を免疫組織化学とELISA法の両者を用いて定性的かつ定量的に検討した。第3年度の研究成果については学会にて報告した。現在論文公表を準備している。
|