研究課題/領域番号 |
24592617
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山下 英俊 山形大学, 医学部, 教授 (90158163)
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キーワード | 網膜硝子体疾患 / 炎症 / 樹状細胞 / 糖尿病黄斑浮腫 / ステロイド / 抗VEGF薬 |
研究概要 |
糖尿病黄斑浮腫(DME)における炎症メカニズムの関与の分子メカニズムとして炎症反応の司令塔となる樹状細胞の遊走メカニズムについて検討した。また、ステロイド薬をもちいた臨床研究をおこなった。 1.樹状細胞(DCs)の機能を検討するために、活性化したDCsの角膜組織へのリクルートにおいてリンパ系の関与が考えられた。さらに高血糖状態でのDCsの細胞生物学的な機能の変化についてヒトDCsについて検討した。ヒト角膜上皮細胞を高血糖状態で培養するとTNFαの産生が亢進していた。 2.ステロイド薬としてジフルプレドナート点眼薬のDMEに対する長期予後を検討した。びまん性糖尿病黄斑浮腫に対してジフルプレドナート点眼薬を点眼した31例42眼である。硝子体手術の既往がない症例が17例22眼、硝子体手術の既往がある症例が14例20眼であった。治療としてジフルプレドナート点眼薬を最初の1か月は1日4回点眼し、その後2か月間は1日2回点眼として計3か月で点眼を終了した。点眼治療期間3か月間の平均logMAR視力の推移は、硝子体手術既往の有無の両群とも点眼期間中は視力が維持されていた。点眼開始時の視力で4群に分けて検討したところ、点眼開始時の視力が0.15~0.3の群で視力改善は25%と最も多く、平均視力も改善の傾向差を認めた。平均網膜厚は、硝子体手術既往の有無の両群で点眼期間中は有意に減少していた。点眼中の経過:光凝固開始時からの著明な嚢疱様浮腫は点眼を併用することでレーザー治療中軽快を得られ、視力も経過中ほぼ保たれた。外科的治療も点眼治療併用は容易であった。ステロイド点眼治療は注射などの処置が必要なくいつでも開始できること、外科的侵襲がないため何度でも繰り返して使用することも可能である点などの利点がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
糖尿病網膜症の黄斑部病変である糖尿病黄斑浮腫における炎症メカニズムの関与とそれに対するステロイドの治療効果を検討し、糖尿病黄斑浮腫における炎症メカニズムについて検討するものである。 1.細胞生物学的な検討:樹状細胞がほかの系統の細胞(今回は角膜上皮細胞)との共培養での高血糖負荷により炎症性サイトカイン産生が促進されることがあきらかになった。 2.炎症メカニズムが関与するということを臨床的に検討するためにおこなった糖尿病黄斑浮腫におけるステロイド点眼薬(ジフルプレドナート点眼薬)の治療効果検討により、浮腫がジフルプレドナート点眼薬投与で軽減される治療効果を確認した。 以上の検討の結果から、糖尿病黄斑浮腫では硝子体内には炎症性の細胞、特に樹状細胞がほかの系統の細胞と相互作用をして炎症サイトカインが産生されること、これはステロイド薬による抗炎症作用で抑制されることから炎症メカニズムによることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
細胞ネットワークを構成する異なる系統の細胞の相互作用により、糖尿病状態では炎症メカニズムの活性化、その後の病態悪化に際しての炎症惹起カスケードのpositive feed back制御を解明することにより、網膜硝子体疾患の病的状態を是正するための治療薬開発をめざす。
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