研究実績の概要 |
硝子体に存在する細胞成分の機能、起源、病態における役割について引き続き検討をおこなった。糖尿病患者硝子体中の糖濃度を測定したところ血糖値に並行して糖濃度が高く、増殖糖尿病網膜症における硝子体内環境として細胞生物学的な刺激因子として病態に関与する。硝子体における細胞成分は増加し、慢性的な炎症が惹起されることから、本研究では硝子体由来細胞のヒアルロン酸(ヒアルロナン)産生制御について、糖負荷下における炎症機転を制御する単球由来樹状細胞(DC)の制御機構について、共培養系を用いて検討した。方法:ブタ硝子体由来細胞を初代培養から形態学的に観察した。糖濃度100 mg/dL (対照)、450 mg/dL (糖負荷群)の培地で培養し3日、7日後に細胞上清を回収した。また、ブタ単球由来のDCとブタ硝子体由来細胞を共培養 (DC群)し、6時間、24時間で培養上清を回収し、各々上清中のヒアルロナン濃度をELISAで検討した。結果:ブタ硝子体由来細胞は接着細胞で、両端にとげ状の突起を有する扁平な形状を呈し、線維芽細胞に類似した形状を示した。3日間の糖負荷ではヒアルロナン濃度に有意差を認めず、7日以降では有意に低下した(対照; 53.19 : 糖負荷群; 13.84 ng/ml, p < 0.01)。またDC共培養を行った場合、共培養前と比較して有意にヒアルロナン濃度が低下した(対照; 70.09, 6h ;36.11, 24h ; 34.52 ng/ml, p < 0.01)。結論:培養ブタ硝子体由来細胞は、線維芽細胞に類似した形態学的特徴を有し、恒常的にヒアルロナンを産生した。長期間糖負荷やDCとの共培養に伴う細胞へのストレスが硝子体由来細胞のヒアルロナン産生を抑制する可能性が示された。炎症機転を制御するDCが糖尿病網膜症病態に関与するメカニズムの一つの面を明らかにできた。
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