薄暮時実用視力計の試作を行い健常眼での測定を行った.また明視時実用視力検査も同時に行い,結果の比較を行ったところ,瞬目を除く全てのパラメータで薄暮時視機能が低下することが判明した.特に注目に値するのは60秒間の視力変動を表す標準偏差値と最高視力と最低視力の差であるが,薄暮時にはこれらのパラメータが有意に低下することが判明し,つまり薄暗い環境下では視力が低下するだけでなく,その低下した視力を維持することが極めて困難であることが判明した.この原因として調節微動の関与が考えられ,つまり照度が低下するにしたがい,調節微動が増加することが既に報告されているが,暗所では視標を判別することが極めて困難となるため,ピントを合わせるための調節微動が大きくなり,これが視力の不安定性をもたらしていると考えられた.また眼球運動や固視微動も暗所では大きくなることが知られており,これも今回確認された薄暮時視力の不安定性と関連しているかもしれないと考えられた.上記の内容は英文論文“Mesopic functional visual acuity in normal subjects”に既にまとめており,PLOS ONE誌に投稿中である. その他,白内障眼や緑内障眼,網膜疾患を有する患者でも薄暮時実用視力が低下する結果が得られており,従来の視機能検査よりも鋭敏に検出できることが判明した.QOLとの相関もみられ,これらの結果は現在論文にまとめている.
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