研究課題
基盤研究(C)
近年、近視は増加の一途をたどっており、特にアジアでの近視の罹患率は40%程度と報告されている。その中でも近視の程度が強い強度近視は5%程度に認められ、我が国の中途失明の原因の上位を占めている。強度近視よる失明は主に脈絡膜新生血管およびそれにともなう網脈絡膜萎縮によって生じているにもかかわらず、強度近視眼における脈絡膜新生血管の発生機序は解明されていない。我々は強度近視症例の末梢血から得られたDNAサンプルを1000以上保有しており、これまでにも強度近視の発症に関わる感受性遺伝子を同定するために、ゲノムワイド関連解析等の研究を行い、その成果を発表してきた。本研究では上記サンプルのうち、脈絡膜新生血管を有するものを有さないものの遺伝子型を比較することにより、脈絡膜新生血管の発生原因を探求した。VEGF遺伝子の一塩基多型が脈絡膜新生血管の発生には関与していないものの、脈絡膜新生血管の病変サイズに影響を与えることが明らかとなった。さらに、この一塩基多型は強度近視眼における脈絡膜新生血管に対する抗VEGF治療の後の視力予後にも影響を与えており、その機序として病変サイズを介したものの他にVEGF遺伝子の一塩基多型が直接的に作用している可能性を明らかにした。本研究の結果は、強度近視眼における脈絡膜新生血管の発生・拡大機序の解明につながるだえけでなく、その治療効果の違いをも説明できる可能性があり、強度近視を原因とする失明の予防につながると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
強度近視症例の末梢血から得られたDNAサンプルのうち、脈絡膜新生血管を有するものを有さないものの遺伝子型を比較することにより、脈絡膜新生血管の病変サイズ拡大にVEGF遺伝子の多型が関与していることを明らかにしただけではなく、治療に対する反応性にも影響を与えていることが明らかとなり、強度近視を原因とする失明の予防につなげていくことが出来ると考えた。また、マウスおよびラットをもちいた近視モデル作成を並行して行っており、動物実験の準備も整っている。
平成24年度の研究では脈絡膜新生血管を有するものを有さないもののうち、550Kチップおよび610Kチップを用いて50万から60万の一塩基多型(SNP)を検出したサンプルを用いて、比較検討を行ったが、有意差を示すSNPが発見出来なかった。今後は1000ゲノムデータを用いてimputeを行った後に再度比較検討を行い、新たなターゲットを発見していく。
新たに発見したSNP近傍の遺伝子をターゲットにして、全サンプルを用いて遺伝子内のSNPを検出し、候補遺伝子を絞っていく。また、我々は新たに近視発症の原因となる遺伝子を発見しており、その遺伝子が強度近視眼における脈絡膜新生血管の発症に関与している機序をゲノム研究および動物実験で示して行きたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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