研究課題/領域番号 |
24592626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40418760)
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研究分担者 |
大音 壮太郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10511850)
荻野 顕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70622629)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 予測モデル / 2眼目 / 国際情報交換(アメリカ) / ゲノム |
研究概要 |
この研究は、ゲノム情報や視細胞の形態・生理変化に基づく加齢黄斑変性の僚眼発症予測モデルの確立を目的として計画された研究である。今年度は計画に従って以下の研究を行った。 2眼目発症予測モデルに用いる予測因子の選定:最終的に用いる回帰曲線で使用する予測因子候補は幅広く検討し、交絡因子の検討とその影響の最小化を検討した。 ここで、決定した予測因子に関して、各症例から一般的な予測因子のデータ収集を開始した。個々の症例ではARMS遺伝子のA69S多型の測定を実行した。具体的には、対象患者から採血を実施し、本研究室で開発済みのARMS2遺伝子のA69S多型の測定を行う一方、残りの血液からDNAを抽出し保存解析を行い。最終的に対象患者の遺伝子多型を決定した。 補償光学を適用した走査レーザー検眼鏡の測定条件決定(AO-SLO)を次の方法により決定した。本検査器械は個人毎に異なる眼球光学系全体の収差を補正する補償光学システムを用いたもので、面分解能が3μmとなっており生体眼で非侵襲的に視細胞を観察することができるものである。極めて先進的な検査機器であり測定状況なども随時調整をを経て、本研究に最適となる測定条件を決定した。 従来から網膜疾患の診断に用いられる網膜電図は硝子体出血や高度白内障などの中間透光体の影響を受けにくり点がある一方で、再現性には問題を指摘されてきた。研究分担者の荻野助教は眼球追尾システムの搭載に取り組み実用化に繋げてきた。必要に応じて、メイヨー社、吉川眞男研究員らの研究グループからの協力を得ながら、眼球追尾型網膜電図の測定方法の本研究に最適となる測定条件を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢黄斑変性や類似した病態とも考えられている近視性脈絡膜新生血管、毛細血管拡張症、網膜色素線条に伴う脈絡膜新生血管などに関する詳細の検討を行い、さらに病態観察を新開発の補償光学適応レーザー走査型顕微鏡や光干渉断層計、眼球追尾型網膜電図も用い丹念に行い検討を加えた。一方で、眼科治療のもたらすQOL改善効果と経済効率性の評価を行うことができた。具体的には、網膜下出血を伴う加齢黄斑変性の視力予後(Ueda-Arakawa N, JJO. 2012)やラニビスマブ硝子体注射治療への反応を左右する因子(Yamashiro K, AJO. 2012)、網膜の形態変化と視機能との関連性(Akagi-Kurashige Y, Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2012)などについて報告した。毛細血管拡張症の詳細で総合的な病態変化(Takayama K, Retina 2012)や近視性脈絡膜新生血管への抗VEGF剤治療の長期成績を報告し、網膜色素線条では脈絡膜新生血管の時間経過に伴う変化(Nakagawa S, Retina. 2013)を報告した上で、日本における弾性線維性仮性黄色腫の診断基準作成(厚生労働省宇谷班、日眼会誌及び日皮会誌. 2013)に深く関与した。 さらに、日本での白内障手術のQOL改善効果と経済効率性の評価(ECCERT, JJO. 2013)を報告し、本研究を単純化した日本人の加齢黄斑変性における僚眼発症とARMS2遺伝子多型の関連性(Tamura H, AJO.2012)を報告した
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今後の研究の推進方策 |
各症例への治療及びデータ収集を継続する。前年度から引き続き各症例への治療と各種診療データを集積する。AO-SLOの検査状況の調整:随時必要となる検査状況の修正には大きな変更が必要となることも予想される。制作開始時から一貫して本機会に関与してきた板谷准教授(久留米大学)からも即座に支援が得られる環境にあり、研究続行に支障はない。得られたデータの中間解析:研究が予定通り進めてよい状況にあるのか、微修正を要するのか確認するために中間解析を行う。解析方法はハーバード大学と連絡を取り最適な回帰モデルの選択を行う。収集したデータの解析:心筋梗塞の発症予測モデル作成などの疾患予後予測モデル作成の経験が豊富なハーバード大学公衆衛生大学院クック教授の助言を得ながら収集したデータの解析を行う。 2眼目発症予測モデル作成:上記で行った解析を踏まえ、最終的な予測モデルに用いる予測因子の選定を行い、各係数を決定した上で予測モデルを決定する。 因子数(変数)が最大のモデルと最小のモデルでの予測精度の違いを検証し、可能な限り少ない因子数による精度の高いモデルを決定する。データ解析ならびに予測モデルの作成では高度な統計学的検討では高度な疫学や統計学の知識が求められ困難も予想されるが、研究代表者の留学先でもあり同分野の世界的リーダーでもあるハーバード大学の公衆衛生大学院の疫学講座とはクック教授をはじめとして、複数の研究者と関係が深く適切な助言が得られる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の特徴な疾患特異性の高いゲノム情報と膨大な画像情報を研究材料にすることである。研究で得られるデータの保存のために種々の記録媒体(ポータブルハードディスク・据え置き型ハードディスク・DVD・サーバなど)が必要となり、その購入費用を要するため、総額20万円を見込んでいる。 また、独自で開発した遺伝子解析に用いるキットも用いるため、その購入費用として40万円を見込んでいる。 さらに、国内外での情報収集、研究方法の相談及び成果発表のため、国内旅費及び海外渡航費が必要となると見込まれ、総額60万円を見込んでいる。 膨大な種々のデータの入力を担当する補助員への謝金として15万円、その他の経費として10万円を見込んでいる。
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