加齢黄斑変性の最大の背景因子は加齢であり、加齢に伴う網膜色素上皮細胞(RPE)の機能低下を原因として網膜の恒常性が破綻し、血管新生や網膜障害が起こる。本研究では加齢に伴うRPEの機能低下をAMPKの活性化によって防止できるかどうかを検討した。平成25年度までに、細胞に慢性の酸化ストレスを与えて、細胞に老化を誘導する方法を確立していたので、平成26年度はこの方法を用いて、網膜色素上皮細胞に加齢を誘導し、加齢による網膜色素上皮細胞の機能の変化を検討した。また、加齢黄斑変性の後期にみられる病的な線維化を網膜色素上皮細胞に誘導し、これらに対するAMPKの活性化の影響について検討した。その結果、加齢変化に伴い、網膜の細胞外基質の増減に関与するMMP-2の発現が減少することが明らかとなった。また、網膜色素上皮細胞の上皮間葉転換がAMPKの活性化によって有意に抑制されることが明らかとなった。これらの結果から、加齢に伴う網膜色素上皮の機能の低下や、上皮間葉転換の治療において、AMPKが新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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