研究課題/領域番号 |
24592634
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
園田 祥三 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20325806)
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キーワード | 網膜色素上皮細胞 / 極性 / TNF-a / トロンビン / 糖尿病黄斑症 / VEGF |
研究概要 |
H25年度も継続して極性網膜色素上皮細胞(RPE)を使った研究を行った。研究成果の一つは、極性を持つ細胞(極性RPE)と極性を持たない細胞(非極性RPE)との違いに注目して研究を続けた結果、炎症の際に重要なシグナルである、TNF-a刺激を行った際に、極性RPE・非極性RPEで細胞内シグナルの伝わり方が異なることを見いだした。従来RPE基礎研究においては、TNF-a等の炎症性の刺激によるVEGF分泌増加が起こると考えられていたが、極性RPEでは逆にVEGF分泌が低下することを見いだした。このことは現在注目を集めている加齢黄斑変性の病態解明につながるものと考えている。その他、TNF-aのほかトロンビンにおいても、極性・非極性RPEでの反応性の違いを見いだした。 またこれまではブタRPEを使い極性RPEを作成していたが、ヒトRPEで極性を持つ細胞の培養に成功し、以後はこの細胞を使って研究を進める。ブタ細胞を使った場合、抗体等の試薬の選択に限界があったが、その点が解決さることになった。 その他、極性細胞の可能性を臨床へ広げる試みとして、糖尿病黄斑症に注目して研究を進めた。糖尿病黄斑症の漿液性網膜剥離(SRD)を伴うタイプでは、嚢胞タイプやretinal swellingタイプと異なり、RPEの病態形成への関与が強いのではとの仮説を立てて研究を行っている(臨床研究において、SRDタイプのみ眼内のIL-6やIL-8が有意に高知であること、またDMEの抗VEGF療法およびステロイド眼内投与の効果の違いを調べた前向き試験から、SRDタイプにおいて、ステロイドの方が有意にSRDを消失させる効果が高いことを見いだした)。今後、これらの結果を実験的に解明すべく極性RPEの培地用いて実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極性・非極性の違いによるブタ網膜色素上皮細胞の反応性の違いを、TNF-aやトロンビンといった各種刺激毎に解析を行い証明することができた。これらが細胞の状態ごとの病態形成を反映している可能性があり、より正確な病態解明につながる可能性がある。 また従来ブタ細胞を用いていたが、抗体などの試薬選択において限界があった。今回ヒト網膜色素上皮細胞を用いて極性細胞の培養方法の樹立に成功した。今後はヒト細胞を用いて実験を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト網膜色素上皮細胞を使った極性細胞の樹立に成功し、これまで問題であったブタ極性細胞をつかった実験における、試薬選択の限界の問題をクリアできた。また、ヒト網膜色素上皮細胞を使うことで、DNAマイクロアレイの利用が可能となり、各種刺激に対する極性・非極性細胞の違いを網羅的に解析することが可能となり、それらも活用予定ですある。 今後のテーマである、糖尿病黄斑症について、培養培地に高血糖付加を行い(上下コンパートメント毎に)、細胞内シグナルの解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初ブタを使った細胞培養を行っていた際にコンタミが発生、極性細胞の獲得ができなくなり数ヶ月にわたり培養がストップしたため。(その間培養維持に関わる経費が発生しなかった)その間原因究明に費やした。 上記のブタ培養用細胞のコンタミを受けて、プライマリーカルチャーに代わって、セルラインであるヒト網膜色素上皮細胞を使った極性細胞の培養に成功した。今後はこのヒト網膜色素上皮細胞を利用して実験を進める。そのために、培養添加物質としてEGFなどの種々の増殖因子が、従前の培養方法と比較してコスト的にはかかる。培養経費を中心に、前年度の繰越金を活用予定である。
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