研究課題
網膜色素上皮細胞 (RPE)は眼内の恒常性を保つために重要な役割を担っている。網膜疾患の病態を解明すべく、RPE培養細胞を用いた研究が行われているが、従前は生体RPEがもつバリア機能、細胞間接着装置、物質輸送能などを持たない細胞 (細胞極性を持たない細胞)を用いられており、生体の環境を厳密に反映しているとはいえない。我々は、ブタ細胞をtranswell上に培養し、安定的に極性を持つRPE培養法を確立し実験を行った。本研究で、極性RPEを用いた実験では、極性の有無によってTNFaやトロンビンなどに対する反応が異なることを見いだしている。従来の細胞ではTNFa刺激によりVEGF分泌は亢進していたが、極性細胞では逆の結果が得られた。トロンビン刺激ではKi-67の発現が極性細胞ではほとんど認められなかった。極性細胞有無による様々な細胞刺激の違いを初めて示すことができ、この反応の違いがより正確に病態を理解する事につながると考えらる。すなわち、正常および病初期においては、RPE細胞は極性を有しており、病期の進行にともに細胞障害が進み、同時に極性が失われてゆくと考えられる。RPEのような極性を有する細胞においては、極性の有無を考慮する必要があることを初めて示すことができた。また、我々は細胞指向性を持つあらたなPEGリポソーム、眼内挿入可能な超小型の超音波プローブ開発をおこなった。本研究では、25Gサイズのプローブを用いて、網膜へのGFP遺伝子導入を行った。
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