研究課題/領域番号 |
24592646
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
比嘉 一成 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (60398782)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 角膜上皮幹細胞 |
研究概要 |
角膜上皮幹細胞/前駆細胞で発現すると考えられるN-cad、p63、keratin(K)15などの発現について免疫染色を用いて検討した。N-cad陽性(+)Tiny cellsはK15陽性、p63陽性の比較的未分化な細胞であることが分かった。また、Tiny cells中には実質の細胞やメラノサイトも含まれている可能性も考えられるため、Vimentin、Aquaporin(AQP)1、MART-1、Melan A等の抗体を用いて免疫染色を行ったところ、N-cad+ Tiny cellsにはVimentin陽性、AQP1陽性の実質側の細胞も存在していた。さらに、このTiny cellsは角膜輪部基底膜周辺の細胞であると考えられることから、角膜輪部上皮基底膜で発現する、Collagen type IVならびにLamininについても染色を行った。Tiny cellsにおけるCollagen Type IVならびにLamininの発現はN-cad+細胞に近接して発現が認められ、AQP1+細胞に接して発現が認められた。 次に、輪部基底層に存在する小さい細胞がTiny cellsであることを確かめるため、上記で検出した細胞の大きさ(細胞の直径)、N/C比についても測定ししたところ、N-cad+細胞はN-cad-細胞よりも細胞直径が小さく、N/C比が大きいことが分かった。さらに、N-cad+細胞ならびにAQP1+細胞が実際に基底膜に接している細胞であるかについても観察するため、Tiny cellsをsingle cellsへバラバラに処理を行ってN-cadもしくはAQP1とCollagen Type IVもしくはLamininとの2重染色を行った。N-cad+細胞ならびにAQP1+細胞にはCollagen Type IVもしくはLaminin陽性細胞が存在していることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度において我々はヒト角膜輪部組織から分離したTiny cellsの組織学的な解析を行って、Tiny cellsは角膜上皮幹細胞が存在するとされる、上皮基底層周辺の小さい細胞塊であることが解ってきた。Tiny cellsの共焦点レーザー顕微鏡によるさらなる解析までは出来なかったが、Tiny cellsのN-cad陽性細胞ならびにAQP1陽性細胞それぞれが基底膜に接する細胞が存在していることがわかったことは大きな進歩である。これらのことから現在までの研究の目的の達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Tiny cellsの維持培養法を確立するためには、分化を抑制することが必要である。そこで、角膜輪部上皮基底層で発現し、コロニー形成に重要なN-cad と角膜輪部上皮の増殖を促進し、分化を抑制する低酸素環境を利用するなど、培養環境によるTiny cellsへの影響を観察し分化抑制を検討する。 Tiny cellsにおいて細胞同士の接着に重要な接着分子が発現している可能性があるため、カドヘリンやコネキシン等の接着分子の発現についても観察する。また、その接着分子関連タンパクについても観察し、Tiny cellsの分化過程における接着分子との関係も観察する。 Tiny cells培養中におけるN-cadによる影響を確認するため、N-cad-Fcをコートしたプレート上にTiny cellsを培養し、その増殖能や分化の程度を観察する。コントロールとしてE-cadherin-FcもしくはFcのみをプレートにコートしたものを使用する。培養した上皮細胞のケラチン3、12、15、N-cad、p63などを免疫染色し、コートしたN-cadによる影響の観察を行う。また、培養過程における細胞同士の接着や位置等、3次元的な構造の変化についても共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、N-cadによる影響を観察する。 Tiny cells培養中における低酸素による影響を確認するため、2%酸素濃度条件下におけるTiny cellsの増殖、分化への影響を観察する。コントロールとして20%酸素濃度条件で培養し、比較する。指標として、ケラチン3、12、15、N-cad、p63などの発現を免疫染色並びにmRNAレベルで比較検討する。また、培養過程における細胞同士の接着や位置等、3次元的な構造の変化についても共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察し、N-cadによる影響を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
さまざまな培養条件においても比較検討し、Tiny cellsの分化抑制を試みる。指標として、ケラチン3、12、15、N-cad、p63などの発現を免疫染色並びにmRNAレベルで比較検討する。また、同様に3次元的な構造の変化についても共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察する。 上記により決定されたTiny cellsの分化抑制培養条件で、長期間培養を行い、角膜上皮細胞への分化誘導を行う。また、Tiny cellsが培養上皮シートの細胞源として有用であるか確認するため、Tiny cellsから培養上皮シートを作製し、輪部上皮から作成した培養上皮シートと比較検討する。シート作成後、ケラチン3、12、15、N-cad、p63などの発現を免疫染色並びにmRNAレベルで比較検討する。また、シート中に増殖可能な細胞が存在するか確認するため、コロニー形成能についても比較検討する。
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