研究課題/領域番号 |
24592654
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
藤巻 拓郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50333042)
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研究分担者 |
村上 晶 順天堂大学, 医学部, 教授 (90157743)
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キーワード | 常染色体劣性網膜色素変性 / Leber先天黒内障 / 家族性滲出性硝子体網膜症 / Norrie病 / マイクロアレイ / MLPA法 / 次世代シーケンサ |
研究概要 |
眼科稀少疾患患者の迅速正確な遺伝子解析システムを構築し、原因究明と治療可能な患者を見出すことを目指している。常染色体劣性網膜色素変性(autosomal recessive retinitis pigmentosa: ARRP)と、Leber先天黒内障(Leber congenital amaurosis: LCA)の計105例はマイクロアレイを用いた。異常が検出されない4例は次世代シーケンサでの遺伝子解析も試みた。家族性滲出性硝子体網膜症(Familial exudative vitreoretinopathy : FEVR) 9家系22名、Norrie病1家系3名に対し6種の遺伝子の解析を行った。変異の確認できなかった家系はligation dependent probe amplification法(MLPA法)を施行した。 ARRP・LCAについては現在までに105例中13例に病因となり得る変異を検出した。NMNAT1遺伝子の2家系においてヘミ接合の新規変異である可能性が示唆された。LCAの1家系にRPGRIP1遺伝子のエクソン17欠損新規変異を認め、論文査読作業中。Norrie病の1家系2名にNDPエクソン2を含む欠失を認め、論文査読作業中。FEVRの1家系2名にFZD4の変異を認め、論文発表準備中。 論文発表:村上 晶 第117回日本眼科学会総会評議員会指名講演III 眼疾患と遺伝子 眼科遺伝子診療をめざした遺伝情報解析 日本眼科学会雑誌日眼会誌 118:283-298 2014 その他報告:藤巻拓郎、宮崎 愛、藤木慶子、新井英介、近藤峰生、岩田文乃、村上 晶 Leber先天盲を含む常染色体劣性網膜色素変性のマイクロアレイを用いた遺伝子解析 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班 平成24年度 総括・分担研究報告書 17-9 2013
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・新たな患者にも説明と同意のもと36名の協力が得られ(平成13年11月時点)順次塩基配列決定を進めている。 ・NMNAT1遺伝子の2家系において、予期しない遺伝子変異を認めたため、新たに共同研究機関として承認された、Center for Medical Genetics Ghent (CMGG) Ghent University Hospital - Belgiumに解析を依頼し、NMNAT1のヘミ接合である可能性が示唆される結果が得られている。 ・研究成果は日本眼科学会、Association for Research in Vision and Ophthalmology: ARVO, U.S.A.(視覚と眼科学研究協会会議)、厚生労働省難治性疾患克服研究事業網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究班会議、などにおいて発表した。 論文発表は日本眼科学会雑誌、厚生労働省難治性疾患克服研究事業網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究班報告書にて発表し、現在jjo the japanese journal of ophthalmology誌へ論文2報の投稿が終わり、査読作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
眼科稀少疾患患者の迅速正確な遺伝子解析システムを構築し、ARRP、LCA、FEVR、Norrie病において、新規変異を見出す事が出来た。しかし、本システムを用いても、未だに原因を特定できない症例も存在した。眼科稀少疾患、とりわけ網膜変性疾患関連遺伝子数は現時点でも増加しており、既存のマイクロアレイでは全て対応されていない場合が多い。 近年実用化されている次世代シーケンサを用いた全エキソーム解析などの方法を用いて、残る症例の原因究明と、治療可能な患者を見出すことを更に目指して、今後の研究の推進方策を計画中である。網膜変性疾患関連遺伝子数は4月時点で204種が知られており、その99%が既存の全エキソーム解析に含まれていることが分かった。全エキソーム解析に際しては、意図しない「予想外の発見」を避けるため、データ解析前に目的外の遺伝子を除外する作業を加えることを考えている。 当大学の老人性疾患病態・治療研究センターにおいて次世代シーケンサの運用が開始され、原因を特定できない症例の解析を少数例から行なう事が可能な状況となった。具体的な運用方法につき他科とも連携し協議が進められている。 将来の眼科稀少疾患の治療を目指すに当たり、重篤で頻度の高い遺伝子変異を持つ症例から重点的に研究開発を推進するためにも、本研究による結果を踏まえ病態解明を推進する必要があると考えられる。
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